Research Abstract |
初年度においては,高性能EB-PVDコーティングの成膜方法と成膜による結晶構造の変化を解析した.Ni基耐熱超合金基材面に,CoNiCrAlYを減圧プラズマ溶射し,さらにナノコーティング技術によりボンドコート面を処理した.その上に,ジルコニアを電子ビーム物理蒸着法により成膜した.基材を固定した場合,また毎分5,10および20回転した場合において,成膜特性が異なった.特に,基材を固定では膜厚方向に<111>配向するコーティングを示したが,回転成膜法では<100>配向が現れた. 次いで,本研究のように強い優先配向を持つジルコニア膜の応力測定方法について研究した.応力測定に適した測定方法を見つけるために,極点図,背面反射X線写真,SEM観察などを行い,配向特性と応力評価に利用できるX線回折条件の検討を行った.回転成膜法では,<100>方位が+/-20度程度コーティング厚さ方向に傾いていた.その結果,側傾法で133+331回折を利用して2点法により,表面の面内方向の残留応力が評価できた.また,高エネルギー放射光によりコーティング内部の残留応力分布を測定するための測定条件および測定方法について検討を行った. 本研究テーマは,高輝度光科学研究センターの課題として採択され,高エネルギーX線によるひずみスキャニング法についても試みることができた.これまで,強い配向膜のひずみスキャニング法は試された例はなく,本実験により測定条件を検討したところ,72keVのX線によりジルコニアの(111)および(600)回折については,残留応力測定に利用できる可能性が高かった. 次年度は,高エネルギー残留応力測定方法の確立,高温酸化したEB-PVD膜の残留応力測定をめざす.さらに,これらの基礎に立ち,高温熱サイクル測定も達成する予定である.
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