2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境負荷を低減するチタン合金の超音波振動ドライ切削に関する研究
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17560107
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science&Technology |
Principal Investigator |
越水 重臣 静岡理工科大学, 理工学部, 助教授 (20267868)
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Keywords | チタン合金 / 超音波振動切削 / セミドライ切削 / ドライ切削 / 切削シミュレーション / 工具磨耗 / 表面粗さ |
Research Abstract |
チタン合金は、軽量かつ高強度で腐食しない。その優れた性質から、近年、航空用部品や医療部品などで用いられ、その需要を伸ばしている。しかしながら、チタン合金は、典型的な難削材である。例えば、旋削加工の場合、チタン合金は、その熱伝導性の低さから、工具刃先から熱が逃げずに激しい工具磨耗にいたる。そのため、大量の切削液を供給しながら切削加工するのが常識となっている。しかし、近年の環境問題の観点からすれば、使用する切削液の量は削減したい。そこで本研究では、工具刃先を超音波振動させながら切削を行う「超音波振動切削」により、切削液の使用量を減らせるのではないかと考えた。すなわち、切削液の機能として、(1)潤滑、(2)冷却、(3)切り屑排出の3つがあるが、超音波振動の付加により、まず切削抵抗の低減(潤滑性の向上)と切り屑排出性の向上が期待できる。さらに、連続切削である旋削を、超音波振動による断続切削にすることにより、工具温度の冷却が促進され、工具磨耗の低減、さらには、工具寿命の延長も期待できると予想した。以下に、チタン合金の超音波振動切削の研究を通して得られた結論をまとめる。 1)実験に先立ち、切削加工のコンピュータシミュレーションを行った。切削シミュレーションの結果、超音波を付与しない従来の慣用切削に比較して、超音波振動切削では工具刃先の温度を100℃程度低くすることが予想できた。 2)超音波振動切削では、慣用切削の1/3程度に切削抵抗を低減できた。 3)超音波振動切削は、慣用切削に比べて切りくずの排出性がよい。常に連続した流れ型の切りくずが排出され、切りくずの巻き込みトラブルなど観察されなかった。 4)切削液供給方法について、ウエット加工、セミドライ加工、ドライ加工の3つの方式について比較をしたところ、チタン合金の超音波振動切削にはセミドライ加工が最も適していることがわかった。 5)超音波振動切削において、切削速度の影響を調べたところ、切削速度は30m/minが最適であることがわかった。これは、超音波振動する刃物の最大速度に対して約30%の速度である。 6)超音波振動切削は慣用切削に比べて、切削面の表面粗さが小さくなる(向上する)。切削速度20m/min、切込み0.1mm、送り0.1mm/rev、ノーズ半径0.4mmの切削条件において、超音波振動切削の表面粗さRyは3.1μm、慣用切削の表面粗さRyは4.0μmであった。
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