2006 Fiscal Year Annual Research Report
透過電子顕微鏡(TEM)を用いたナノスケールの摩擦現象の解明と潤滑法の開発
Project/Area Number |
17560128
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
高木 誠 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40288428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松室 昭仁 愛知工業大学, 工学部, 教授 (80173889)
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Keywords | マイクロ / ナノトライボロジー / 走査プローブ顕微鏡(SPM) / 透過電子顕微鏡(TEM) / Si単結晶 / 転位 / ナノスケール加工 |
Research Abstract |
1.ナノスケールの摩擦現象の解明 昨年度に引き続き、マイクロ/ナノシステムに利用が見込まれているSi単結晶を試料として、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて極微小荷重で引掻き摩擦を行い、それに伴う表面の微構造変化を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて詳細に調べた。マイクロ摩擦で生じた極微小な引掻き摩耗痕の表面に発生する小さな転位ループのバーガース・ベクトルを、電子線の回折条件を変えて転位を観察するコントラスト実験を行うことにより決定した。このような転位の発生は荷重5μN以上で観察され、荷重20μN以上では、転位だけではなくアモルファス相も観察された。このアモルファス相は、引掻き摩擦時に特に応力が集中した摩耗部分に現れる傾向が見られた。また、荷重1μN以下では転位もアモルファス相も観察されなかった。以上より、結晶材料における微小荷重下のナノスケールの摩擦現象としては、主に容易すべり面上での転位の発生と、高応力域に現れる傾向のあるアモルファス相の形成が生じるということができる。 2.走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いたナノ加工における摩擦と電界の効果 Si単結晶を試料にして、走査トンネル顕微鏡(STM)あるいは原子間力顕微鏡(AFM)を用いた微細加工を行い、加工条件を検討することにより、ナノスケールの穴加工、溝加工、及び面加工を実現することを試みた。また、加工に伴う構造変化を明らかにすることにより、加工メカニズムを検討した。その結果、STM加工あるいはAFM加工を用いて、ナノスケールの穴加工、溝加工及び面加工を行うことができた。AFMを用いて形成した加工部の断面に、転位が観察されたことから、AFM加工は塑性変形を伴う機械的な加工であると言うことができる。STMを用いて形成した加工部は、単結晶で構造変化は起きないことから、STM加工は電界蒸発を伴った加工である可能性が高いと言うことができる。 3.その他 ・マイクロ/ナノシステムの構造材料として軽量な金属材料の開発が期待される。本研究では、独自のEGAP(Rotaly-die Equal-charmel Angular Pressing)法を用いて、微結晶から成るAl-Si系合金を作製することができた。この組織の微細化により、Al合金の引張強度や靭性などの機械的性質を大幅に向上させることができた。 ・ショットピーニング等の表面改質により機械的性質を向上させた材料は、マイクロ/ナノシステムの構造材料として利用できる可能性がある。本研究では、ステンレス鋼にショットピーニング加工を行い、TEMによる断面観察結果がら、表面に生じたショットピーニング加工層では組織が微細化し、ナノ結晶になることが明らかになった。それに伴ってその部分の硬度は大幅に向上し、それが材料の疲労強度向上に大きく貢献することを明らかにすることができた。
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