Research Abstract |
【低アスペクト比Taylor渦カオス混合に対する解析】アスペクト比(Γ)の低い場合では,上下境界端近傍に存在する境界層(Ekman境界層)の影響を受けて多様な渦モードが発生する.今回は,微生物培養装置への適用を目的に,Γ=1.0として,回転Reynolds数を20,000程度まで上昇させ,固液混合相の乱流遷移をUVP測定装置によって計測する実験を試みた.この結果,主渦内部ではカスケード的な渦の分裂,融合を繰り返し,回転Reynolds数とともにより高周波化するが,主モードにおけるTaylor渦の原型はあまり変わらず,上下対象渦の一方が押しつぶされてExtra渦になる巨視的な現象は,低Reynolds数からの繰り返しパターンとして観察された. 【Taylor渦濾過装置】濾過実験ではΓ=3とし,ナイロン粒子(平均粒子径約77μm,比重1.2)を使用した.これより,内円筒の回転速度(Reynolds数)が増加するにしたがって,槽内の濃度をあまり低下させることなく,すなわち内円筒フィルターに付着する粒子量を少なくさせ,圧損をあまり高めることなく濾過ができることが確認された.これらの結果から,回転フィルターによる圧損低減効果は大きいと言える.しかし,目下この現象は安定ではないことが判明した.すなわち,カオス混合との関連性があるためか,約5%の頻度で回転速度がかなり速いにも関わらず,内円筒フィルターに堆積する粒子量が異常に多くなる場合が観察された.Taylor渦中に置かれた粒子群は時間経過とともに外周のある定位置軌道に集まる現象が数値解析などの結果によって指摘されている.この現象が顕著に生じているところに,カオス混合の影響が出ると,不安定濾過になる可能性があると予想される.今回外周のある定軌道を周回する粒子群が存在することを実験的に確認することができた.これがカオス混合とどのように関連付けられるのか,今後の課題である.ただし,現在の計測実験では精査することが難しく,パルサーレシーバーあるいは超音波ドップラ流速計,レーザ流速計等による,より高度な計測が必要になるものと思われる.現在,グラニュラーフィルターや,高炉モデル等,可視化計測用の実験装置が比較的簡単にできる固気系モデルで計測実験を実施している.
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