Research Abstract |
電子機器,電力機器の高熱流束での冷却では冷却材の相変化(沸騰)を利用した二相流体冷却が必要と考えられるが,その場合,(1)熱伝達率の向上,(2)起動時の沸騰開始過熱度の低減,(3)限界熱流束の増大,が求められる.従来の沸騰伝熱促進面では,低熱負荷では高い伝熱促進効果が得られるが,高熱負荷では部分的にドライアウトが発生し,伝熱促進効果が劣化する傾向にあった. 溶射加工の場合,水平円柱周りのプール沸騰実験から,高熱流束でも伝熱促進効果は劣化せず,沸騰開始過熱度を低減でき,限界熱流束が平滑面とほぼ同等である結果を得た.また,コールドプレートを想定し,狭隘流路内の伝熱面に溶射加工を施した場合の強制対流沸騰熱伝達特性を評価した.作動流体はフロンR123を用い,サブクール状態で試験部に供給し,非加熱からステップ状に熱入力した場合の過渡伝熱特性,定常時の熱伝達率分布を計測した.流動方向は垂直上昇流とした.幅20mm,間隙幅2mmのアルミニウム製流路の伝熱面に,アルミニウム粒子を減圧プラズマ法で溶射した伝熱面によって沸騰開始過熱度の低減,定常時の熱伝達率の向上が達成され,限界熱流束も平滑面と同等であることが確認された.また,溶射材の粒子を細かくするほど沸騰熱伝達性能が高く,沸騰開始過熱度は平滑面に対し約10K低減され,沸騰領域では平滑面の約6倍の伝熱促進効果が確認された.さらに,中性子ラジオグラフィによる可視化,ボイド率分布の計測結果から過渡沸騰様相を観察すると,平滑面では伝熱面最下流で沸騰が開始し,徐々に沸騰領域が上流に遷移しているが,溶射面では伝熱面でほぼ一様に沸騰が開始することがわかった.また,飽和沸騰領域でのボイド率は溶射面の方が高いことから,伝熱面近くでの相変化量が大きいことが推察された.一方,銅母材に銅粒子を溶射した試験部に対して水平流下面加熱での実験を行った結果,沸騰熱伝達率は実験条件(熱流束,入口乾き度)設定の履歴の影響を受ける結果を得た.すなわち,低乾き度の場合,熱流束を徐々に高くするより,高い熱流束をステップ上に入力することで熱伝達率は大きく向上した.
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