Research Abstract |
臨界電流密度は高温超電導体(HTS)の工学的応用にとって最も重要なパラメタの一つである.それ故,臨界電流密度の非接触・非破壊測定法の開発がとれまで望まれてきた.近年,大嶋等はHTS薄膜の臨界電流密度を測定するための画期的な手法を提唱した.彼らはHTS薄膜に永久磁石を近づけた後に遠ざけながら,薄膜に作用する電磁力を観測した.その結果,最大反発力が臨界電流密度にほぼ比例することが判明した.この結果は磁石とHTS薄膜との電磁相互作用を測定することにより,臨界電流密度を決定できることを意味している. 平成17年度の研究では,数値シミュレーションによって大嶋等の実験結果を再現することを目指した.この目的のため,HTS薄膜中を流れる遮蔽電流密度の時間発展を解析する数値シミュレーション・コードを開発した.よく知られているように,遮蔽電流密度の支配方程式を有限要素法と完全陰解法で離散化すると,特異積分を係数とする連立非線形方程式が現れる.この特異積分は,膜厚を薄くするに従い,強い特異性を示すようになる.こうした理由から,HTS薄膜中の遮蔽電流密度を計算するのは,これまで,困難であると言われてきた.この難点を克服するため,本研究では,特異積分の計算に2重指数関数型(DE)公式を適用することによって,薄膜の場合でも遮蔽電流密度を高精度に求められるようにした.本年度の研究では,DE公式に基づいて数値シミュレーション・コードを開発し,さらに,同コードを用いて大嶋等による実験結果を再現することに成功した.
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