Research Abstract |
携帯電話やPHSのアンテナから放射される電磁波の一部が利用者の体に吸収されるため,簡単な構成で高速・高精度で人体近傍のアンテナの放射効率を測定する方法を確立することが求められている.また,電子機器から漏れた電磁波,特にランダムに発生する瞬時性の電磁波ノイズが発生する場所を特定するため,瞬時的に現れる電磁波を同時に計測し,電磁波を可視化することが重要である. 本年度では,これまで開発した複数の地点から同時に電磁波の振幅を同時測定可能なシステムを改良し,振幅だけでなく,位相測定の可能性を検討した.また,本システムの複数の地点における同時測定が可能な特徴を生かし,本システムをアンテナの放射効率の高速測定システムに発展した.さらに計画にはなかったが,民間会社の共同開発により,本システムをベースとしたアンテナ高速測定システムの商品化を実現した.具体的に,以下のように研究を行い,研究成果を上げた. 1.ローカル信号発信器の位相同調を行い,電磁波の位相測定の可能性を検討した.外部の同期可能な発信機を用いて,ローカル信号を生成し,変調散乱素子に印加することにより,放射される変調波から電磁波の位相情報を引き出す実験を行った.その結果,各プローブの受信信号から位相情報を分離することに成功した.得られた位相に含まれる変調プローブの回路の位相遅延をどのように取り除くかは今後の課題である. 2.アンテナの放射指向性,及びアンテナの放射効率の高速システムを開発し,製品化に成功した.また,本システムを用いて,人体近傍のアンテナの放射効率の測定や,アレーアンテナ放射効率の測定などを行い,次世代位相通信に必須となった携帯端末用アレーアンテナの設計に重要データを得た.
|