Research Abstract |
犯罪の抑止や犯罪捜査,遠隔地の状況把握などを目的として多数の固定モニタカメラが設置されるようになった.しかしながら,カメラ映像には通過する人や車が全て写されること,どのように保存されどのように利用されるかが明確でないことから,プライバシーの問題が浮上しつつある. 本研究は,固定モニタカメラ映像中の移動物体を,通常は識別不可能にし,犯罪捜査など特別な状況が生じた場合には,権限のある人がパスワードを投入して原画像を復元する仕組みを実現することで,プライバシーを技術的に保護することを狙い,17年度は下記の諸機能を実現した. 1.実験システム構築: マルチスレッドでネットワークカメラから画像を取得するプログラム,MPI-MPICHによる分散処理システムを作成し,320×240ピクセルにおいて約7 frames/secの処理速度の実験システムを構築した. 2.スクランブル処理および透明化処理: 1で抽出した移動物体部分に,スクランブル処理(ピクセル入換)および透明化(背景画像に置換え)を行いマスキング画像を生成した.マスキング画像は一般のビューアで見た場合は,物体が何であるかは分かるが,誰であるかや車のナンバーは識別不可能となり,プライバシーが保護されることを示した. 3.電子透かしを用いた復元用データの埋め込み: 原画像復元のため,移動物体部分をJPEG圧縮した復元データを,電子透かしを用いてマスキング画像に埋め込んだ.このとき,JPEG圧縮におけるMCUの中の,Y成分のみを利用することで,マスキング画像の画質が改善され,ファイルサイズの増加も抑えられることを明らかにした. 4.暗号化および復元: 移動物体の暗号化には,強固な暗号化手法であるAESを利用した.また,複数の人物や車が存在する場合に,特定の物体のみを復元し,他の物体はマスキングされた状態で残す手法を確立した.
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