Research Abstract |
本研究は,年々,超高速化・高機能化するコンピュータシステムあるいはデジタル機器の限界を打破するため,新しい設計手法および構成法である非同期式システムについて,その基礎理論と機器構成を行ない評価するものである. 本年度はそのために,1.基礎理論と設計手法およびシステム検証に関する研究,と2.非同期マイクロパイプライン・システムのハードウェア構成,基本論理素子の研究を行なった. 1.従来の同期式デジタルシステムは超高速動作になるとクロックスキュー等の問題が生じ,その微細加工や大規模化に限界が認識されるようになってきた.非同期システムはグローバルクロックを使用せず,要求信号/応答信号を用いた事象駆動型の回路システムであり,本質的には3値論理を基礎としている。非同期式システムは,同期式システムの限界を超え,なおかつ低消費電力,低電磁界輻射などの利点を有する.また,設計や検証において通常のブール代数のみではシステム記述力が弱く,様相論理や時相論理を用いることも少なくない.本年度の研究では非同期システムの基礎理論として,様相論理や時相論理に関する研究および発表を行なった(2件).これは,Constructive論理とSituation論理についての公理体系および構造に関するものと,プライアーの様相論理Qに関する内容であった. 続いて,非同期回路のためのシステム検証技術として,時相論理を応用した研究論文(3件)を発表した.これは,大規模で複雑な動作仕様のシステムが正しく所望の動作を行なうかをシステム記述から検証するCADプログラムであり,国際学会での発表に対して優秀論文発表賞を受けた.さらに,多値論理システムのテスト技術の論文(1件)を掲載した. 2.非同期パイプラインシステムのハードウェア構成として,束データ方式に基づいたパイプラインプロセッサを,科研費で購入したFPGAボード上のLSIに構成し動作させた.非同期コンピュータとして動作確認し,研究発表を行なった.合成手法として,バーストモード非同期回路の合成を研究し発表を行なった.さらに,非同期回路を構成する最新の構成要素をニューロMOSトランジスタで合成したヒステリシス性を持つしきいゲートについても新規の研究として発表を行なった. 国際学会等の参加や論文掲載料に科研費を使用した.
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