Research Abstract |
大都市が展開する沿岸域は,軟弱粘土層が厚く堆積する環境にあり,大規模構造物,海上埋立などによって大きな変形が長期間継続し,上部インフラストラクチャーに悪い影響を及ぼすことが知られている。特に深部の洪積層は,堆積年代が古く,時間効果によって構造が発達したいわゆる高位構造を有しており,載荷による圧縮しろが大きいという問題を抱えている。小荷重であれば構造が頑張って変形を小さく押さえ込むことができるため,陸上構造物構築に対してはこれらの層の変形はあまり問題視されてこなかった。ところが,構造物の大型化,沖合展開に伴い,上載荷重が大きくなり,塑性降伏による大変形が生じるケースが現れてきた。沖積粘土層に対して実施される地盤改良も大深度の洪積層には不可能であり,自然の圧縮に任せておかざるを得ないという弱点もあって,有効に対処できる状況にはない。本研究では,大阪湾に厚く堆積する洪積粘土層に照準を合わせ,堆積過程を考慮した圧縮モデルを構築した。すなわち,100万年間にわたって沈降する基盤上に海進・海退によって粘土砂の美しい互層地盤を形成しているという堆積環境下では,圧密試験によって見かけの過圧密を示すものの実体的には正規圧密粘土であるという視点に立ち,載荷を受ける全過程で非弾性ひずみが生じるという仮定を与え,p_c以下のいわゆる擬似過圧密領域での時間依存性変形を考慮したモデルを構築した。これを弾粘塑性有限要素コードに組み込み,大阪港,関西国際空港建設による洪積基礎地盤の変形解析を実施した。これらの埋立地では詳細な沈下計測が実施されており,解析結果の妥当性を直ちに検証することができる。現段階では,構築した解析モデルは,大阪港の3つの埋立人工島(咲洲,舞洲,夢洲)の時間遅れ沈下を非常に精度良く予測できることが確認できている。特に埋立によってもpcを超えない層であっても顕著な時間遅れ沈下がシミュレートできており,実際の挙動を定性・定量的に評価できる枠組みを構築することができている。次年度は関西国際空港の二期島建設による一期島下の過剰間隙水圧の環流(水枕効果)現象のシミュレートと空港島の長期沈下が今後どのように推移するかについての検討を行い,大阪湾における洪積地盤の長期沈下特性の統一的な解明を目指す。
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