Research Abstract |
2005年度は,栄養塩を考慮した分布型流出モデルを東京湾沿岸流モデルに統合するために,分布型流出モデルの鶴見川流域への適用を行った.分布型流出モデルには,地下浸透,地表面付近の不飽和浸透,表面流,そして浅水流方程式による河川流が組み込まれているモデルを用いており,都市化した鶴見川流域に適用し,よい再現性を得ることが出来た.その際に行った解析結果から,グリッドサイズが大きくなるに従い,山地斜面の平均勾配が減少し,総河道長が減少することが確認され,平均勾配はピーク流量の変化に大きく影響し,総河道長は平均流量に大きく影響していることが解明された.2006年度は,その成果を利用し,栄養塩モデルを組み込むために必要なモデルの選定を行った.さらに,栄養塩モデルを組み込んで再現計算を行う際,北海道沙流川流域を対象とすることとし,沙流川における栄養塩フラックスへの粒状物質の影響評価を行った.その結果,多くの栄養塩は粒状態として存在しており,栄養塩モデル作成には粒状物質のモデル化が重要であることが分かった. 一方,分布型流出モデルが作成された場合に,その結果をインプットとして沿岸・河口域の再現計算を行うモデルとして,当初鉛直2次元モデルを作成する予定であったが,コンピュータの発達の程度を考慮し,3次元モデルによる再現を試みた.主たる検討項目として,河口域モデルの導入による沿岸域での再現性の向上が,どの程度期待できるかを検討するために,保存量である塩分を用いた影響評価を行った.その結果,感潮域特有の河口部における潮汐による運動量の発生が,湾内における塩分濃度の決定に大きく影響していることが分かり,河口域において高精度なモデルを用いることの重要性を示すことが出来た.このようにして作成されたモデルは,web上で東京湾を再現するモデルの基礎として用いられており,本研究の大きな成果として,改めて統合型モデルの重要性,可能性を示すことが出来,2007年度以降,国土交通省関東地方整備局で導入予定である東京湾システムのプロトタイプを作成することが出来た.
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