2005 Fiscal Year Annual Research Report
資源及び廃棄物に対する世代会計の適用と循環型社会推進施策の評価及び検討
Project/Area Number |
17560486
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森杉 雅史 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (00314039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 智博 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40402482)
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Keywords | 廃棄物の再資源化 / システム工学 / 環境経済学 / 動学的価値 / 実質生産性と市場価格 / 価格バイアス / 資源配分上の非効率 / カスケードリサイクル |
Research Abstract |
リサイクル資源は、明示的に質の劣化構造を考えなくとも、最終処分するよりリサイクルする方が限界的な費用は高いことで、動学的に最適な資源配分状態の下では、後世代(資源は製品の生産⇒流通⇒消費⇒1次排出の1サイクルを経ることで1世代進むと考える)になるほどその価値は低くなる。実際には消費財は生産要素原価の積み上げによって価格形成されるため、バージン資源やそれを用いた商品価格より割高になる。一般にこの事実は、リサイクルが進まない大きな要因として取り上げられ、またその過程において必要な追加投入資源やエネルギーが社会的には資源生産性や経済性の観点で非効率となる。これが本研究で掲げる問題意識の「動学的価値付けの欠如」であり、その他にリサイクル業者の地域独占性や、廃棄物処理を含めたサーマルリサイクルの廉価性等も社会的に過少なリサイクル率を導く要因となる。 一方で近年では、循環型社会形成理念に因んだ法整備が急速に進められ、その意味では上記の問題が解消しているかのように見え、むしろリサイクル過剰状態により供給業者が経営破綻に陥るといった問題も指摘されている。この問題も本来の市場機能に排他的な政治配慮によって促されたものであり、いずれにせよ1次廃棄物やバージン資源の実質的な生産性と市場価格の乖離分を定量化し、その影響を客観的に評価することが肝要である。 そこで今年度の本研究では先ず、紙資源のカスケードリサイクルを対象にモデルシステムの構築を図った。この時、価格と生産技術が固定的に与えられた場合、各古紙から紙製品への品種配分率を操作すると、1割強の資源生産性や紙製品生産量の増加が見込めることが判明した。次に20年分の時系列統計データから生産関数分析を図り、紙製品へのバージンパルプや古紙パルプの交差価格弾力性、限界生産性価値-価格比、並びに限界代替率等を定量化し、それらの動向と市場価格の推移を比較した。結果としては、古紙に関しては実質生産性と市場価格は縮小する傾向にあり、システムは効率的になりつつある一方で、バージンパルプについては投入量も増加し、市場価格や生産技術関係も対象期間では左程変化が見られないことから、上記の動学的非効率の解消には至っていないことが窺えた。
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Research Products
(6 results)