Research Abstract |
本年度は,4つの研究計画を立案し,実験・解析の両面から研究に取り組んだ。また,当初の研究計画に加えて,建物の補強工事(例えば,鉄骨ブレース補強工法など)に用いられるグラウト材料に着目した研究も行った。これは,本研究における研究課題の1つである「エポキシ樹脂のひび割れ補修効果に関する実験/解析的検証」と対になる研究であり,建物に対する各種補強工法の効果を検証するために必要な研究の1つである。また,部材の損傷の1つとしてねじれ損傷に着目lし,ねじれ復元力特性が構造物全体のねじれ挙動に影響することを確認した。以下,本年度の主な研究実績の概要を示す。 (1)スキャナによる高精度ひび割れ計測を併用し,破壊モード(曲げ,せん断)の異なるRC梁部材の破壊実験を行なった。実験結果の分析の結果,残留ひび割れ幅から部材変形を推定する手法を確立するとともに,本手法が従来から提案されている手法よりも推定精度が高いことを確認した。 (2)RC造柱の鉛直荷重崩壊実験の計画を立案した。本実験は,従来から計画していた実大RC部材の実験に代わるものである。この実験では,柱部材の崩壊過程を把握するとともに,スキャナによる高精度ひび割れ計測を併用し,残留ひび割れ,部材変形,部材の復元力特性および破壊状態との対応付けを行う予定である。さらに,損傷した柱部材を補修・補強し,再実験を行うことで,エポキシ樹脂による補修効果等を検証する。 (3)グラウト材の基本的な力学特性を実験によって把握するとともに,鉄骨ブレース補強工法を想定して(1)コンクリートーグラウト問および(2)グラウト-鉄骨間のせん断すべり挙動を実験的に確認した。さらに数値解析モデルを作成し,実験結果との対応を検証した。 (4)重量偏心を有する3層RC骨組を対象として,ファイバーモデルによるねじれ挙動解析を行った。その結果,部材に対してねじれ復元力特性を組み込むことにより,ねじれ挙動を追従できることを確認した。さらに,重量,剛性および部材耐力を偏心の要因としてとりあげ,それらがねじれ挙動に及ぼす影響を解析的に検討した。
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