Research Abstract |
経験的グリーン関数法による短周期震源インバージョン手法を開発し,2005年福岡県西方沖地震と2005年宮城県沖地震に適用した。2005年福岡県西方沖地震は,福岡市側のアスペリティに加え,海側にもアスペリティをもつ震源モデルが短周期の観測波形をよりよく再現することを示した。2005年宮城県沖地震に対して推定された2つのアスペリティのうち,破壊開始点付近のアスペリティは1978年宮城県沖地震のアスペリティとほぼ同じ位置にあるが,もうひとつのアスペリティは異なる位置にあることがわかった。また,2005年宮城県沖地震の応力降下量(実効応力)は,1978年以後に日本で発生したプレート間大地震の中で最大であり,1978年宮城県沖地震が2番目であることがわかった。このように,宮城県沖で発生するプレート間大地震は,短周期の励起が大きい特徴があることを示した。 また,H17年度に提案した散乱理論に基づくエンベロープモデルと伝播経路のQ値を用いて,地震基盤での統計的グリーン関数を作成し,その最大加速度と最大速度の距離減衰特性が,地域性を考慮した既往の距離減衰式と整合することを示した。一方,既往の経時特性モデルでは,距離減衰式を説明できないことがわかった。 さらに,統計的グリーン関数法を用いて想定南海地震の強震動予測を行うとともに,予測された強震動を微動・統計的非線形モデル・超高層RC造建物のせん断質点系モデルに入力して,西日本における木造,中低層RC造,低層S造,中高層RC造建物の被害予測を行った。その結果,比較的広域の海岸地域と川沿いの沖積地盤地域などでは建物種別を問わず,大破以上の被害を受ける可能性があることがわかった。一方,超高層建物の被害は震源近傍に限られており,大阪平野など超高層建物の現存するところでは,大及び塑性変形に入る建物はないことがわかった。
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