2006 Fiscal Year Annual Research Report
脱施設化に向けての「民家改修型」痴呆性高齢者グループホームの可能性に関する研究
Project/Area Number |
17560555
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
横山 俊祐 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50182712)
|
Keywords | グループホーム / 認知症 / 環境移行 / 民家改修 / 症状の変化 / 車イス / 個室環境 |
Research Abstract |
GH入居者の認知症の進行や身体状況の低下の実態を把握したうえで、それに伴う生活パターンや介護方法の変化と建築形式(改修型・新築型)や空間的な特質との関係を明らかにし、症状の変容という環境移行を踏まえた建築空間のあり方や民家改修型の有効性と課題にっいて考察した。調査対象は前年度と同様、熊本県内の開設後3年〜6年が経過した民家改修型・新築型GHの7施設である(調査期間:平成18年8月〜平成19年3月)。 1.入居者の変容の実態(調査方法:各GHの記録誌の収集) -症状・身体能力の変化:経年的には、介護度・認知症レベル・ADLともに概ね低下の傾向を示すが、向上、徐々に悪化、急激に悪化など、個人差が大きい。症状の変化と建築形式や介護方法の間に有意な関係は認められない。 -入退去:各施設共通に退去条件として「入院」を掲げているが、年数の経過にともない入退去が頻繁な「変動型」(3施設)、開設当初からの入居者が多くを占める「安定型」(4施設)に分類される。「変動型」では症状が進行すると退去するために、介護度・認知症レベル・ADLの平均値に経年的な変化が認められず、相対的に軽度である。「安定型」では、重度化が顕著である。その背景には、「変動型」は全て病院や老健施設への併設に対し、「安定型」は単独経営であり、入退去の頻度には運営形態が作用している。 2.症状の進行への対応(調査方法:介護状況の観察、運営者への聴き取り) -車イスの使用状況及び意識:自力歩行が難しい場合、バリアフリーが完備された新築型では、比較的手軽に車イスが使用されるのに対し、新築型では複数スタッフの介助、狭小廊下を活用し時間をかけた介助、畳面を活用した壁など、改修型の空間特性を活用し、残存能力を発揮するような介助や移動がみられる。 -寝たきりの入居者の個室環境:プライバシーを重視して閉鎖的な個室で構成される新築型では、寝たきりの入居者は他者・他所との関係が希薄化すること、見守りの難しさ等の課題がある。改修型では、続き間などの開放的な個室が多く、人の気配を感じる、外の眺めを楽しむなどが可能である。また、続き聞を活用して二つの個室を同時に見守るなど、合理的な介護が可能となっている。本人の意志で居場所を選択できない入居者にとって、個室と周囲との連接性や関係性が重要である。 3.終末期への対応(調査方法:運営者への聴き取り) -終末期の入居者の個室には、様々な医療機器の設置、家族の付添や添い寝などが行われるために、面積的なゆとりが必要となる。多様な面積・しつらえの個室構成が求められる。
|