2005 Fiscal Year Annual Research Report
長期的視野でみた歴史的建造物の保存・活用とその運営方法に関する研究
Project/Area Number |
17560575
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
大橋 竜太 東京家政学院大学, 家政学部, 助教授 (40272364)
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Keywords | 建築史・意匠 / 建築・保存 / ヘリテイジ・マネジメント / ヘリテイジ・ツーリズム / コンヴァージョン / リジェネレイション / 再開発 / 英国 |
Research Abstract |
本年度は、欧米の歴史的建造物の保存の実態を把握するために、英国を中心に調査を行なった。文献の検討とともに、二度の現地調査を実施し、現状の問題点を検討した。その結果、以下の点が明らかとなった。英国の歴史的建造物の保存では、最近の経済の好調さによって、これまで想定していなかった状況が訪れている。本来、英国の制度は、第一次大戦後ならびに第二次大戦後の都市再興において、歴史的建造物が取り壊されるのを防ごうとしてできたもので、その後、低経済成長期に整備が進められてきた。これら制度は、順調に成果をあげ、他国の模範にもなってきた。しかし、昨今は、大規模で急速な都市再開発の流れのなかで、本来の建築保存が実践されていないのではと思われる事例も生じてきた。それは、サッチャー政権後、経済復興を優先した規制緩和により、都市計画上もさまざまな緩和措置が行なわれたことが原因していると考えられる。特に、歴史的建造物の保存に関しては、「コンヴァージョン」と呼ばれる用途変更による保存が、政府によって推進されてきた。経済停滞期には、用いられなかったオフィス・ビルが再生するなど成果を上げてきたが、昨今の例のなかには、コンヴァージョンによる新たな建築のための機能が優先されるがゆえ、本来の歴史性を損なうような開発も行なわれているように感じられる。たとえば、窓の少ない城郭建築をホテルに改修するために、壁面に大きな開口部を新たに設けた開発も許可されている。これらに関して、建築保存家のなかには反対意見もあったというが、この議論が十分であったかどうかは疑問が残る。そこで、次年度以降、これら急速な開発に対して、英国の建築保存はどのような対処を行い、それがどの程度有益であるかを、調査・検討していきたい。
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