2005 Fiscal Year Annual Research Report
九州北部に於ける近世社寺建築大工の作風と技術の伝播方法及び組識の研究
Project/Area Number |
17560578
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 正彦 九州産業大学, 工学部, 教授 (80098772)
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Keywords | 神社建築 / 寺院建築 / 棟札 / 大工 / 江戸時代 |
Research Abstract |
1.大分市古国府に子孫が在住する旧府内藩、大工棟梁矢野初右衛門の作品である大分市大字田尻に鎮座する歳神社神殿と由布院町大字川上にある見成寺本堂の詳密な調査研究を進めた。これについては、平成17年度日本建築学会九州支部研究報告会にて次のような結果を発表した。1)身舎は、出組と平三斗の相違はあるけれども、いずれも拳鼻付きである。2)正面と両側面(見成寺は外陣部分)にどちらも切目縁を設けるが、歳神社神殿は跳高欄を、見成寺本堂は擬宝珠柱付き高欄とする。3)見成寺本堂の向拝は昭和29年に改造しているが、水引虹梁の象頭木鼻などは寛政10年(1798)のものである。そこで、比較すると、どちらも組物は連三斗で手挾を用いている。 また、平成16年度に大会や支部研究報告会で発表した大工棟梁佐藤左之策の作品を調査した際の結果を、「天領の神社棟札」と題して、平成17年度日本建築学会大会学術講義演会で、次のような結果を発表した。 天領内の江戸時代の神社棟札に、代官や郡主の「武運長久」を記すものが43枚中12枚に見られた。天領以外の神社棟札ならば、当然藩主の「武運長久」を記す。特に村民の浄財だけでなく、藩主から寄進を受けた神社であれば、藩主の「武運長久」を記すのは当然である。しかし、天領内の神社棟札は藩主のかわりに代官の「武運長久」を記す。これは、代官が、江戸時代に幕府・諸藩の直轄地を支配する地方官トップの職名となっていたからであろう。鬼よりこわい代官をイメージしながら、氏子達の浄財によってたてたとは言うものの、棟札に四字熟語の代官の「武運長久」を記入したものと推測される。そして、この場合「武運」よりも「長久」に重い意味があるものと思われる。 2.調査研究を進めていくうちに収集した、大分市古国府に子孫が在住する大工利光家文書の解説を進め学内研究報告に発表した。
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Research Products
(6 results)