2005 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学反応における金属の酸化還元電位の密度汎関数法による算出
Project/Area Number |
17560684
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 久芳 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (40128690)
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Keywords | 標準酸化還元電位 / 密度汎関数法 / 溶媒効果 / Born-Haberサイクル |
Research Abstract |
標準酸化還元電位は電気化学における最も基本的な量ではあるが、量子化学計算に基づいた算出は、価数のみ異なる錯体間のような系を除いては行われていない。本課題では、Born-Haberサイクルを組み合わせて、金属中の原子が溶出し、水和イオンと電子に電離する過程としての標準酸化還元電位の算出に成功した。 計算方法の概要を記す。理論式で書かれる標準酸化還元電位は(1)金属バルク結晶からの昇華エネルギー、(2)金属原子のイオン化エネルギー、(3)金属イオンの水和エネルギーに分解される。(1)については凝集エネルギーの実験値を用いた。(3)の過程では、溶媒(水)の効果を間接的に扱う連続体近似を用いた。水和錯体の構造は、個々の金属イオンごとに複数のモデルを考え、それぞれのイオンで最安定な構造のエネルギーを採用した。さらに、精密化した計算では、連続体近似と構造最適化を同時に行い、その後、振動数解析を行って自由エネルギーを算出して、実験値との比較を行った。 実際の計算はハイブリッド密度汎関数により、self consistent reaction field法のpolarized continuum modelにより行った。金属原子の基底関数についてはモデルコアポテンシャルと全電子計算で比較したが、大きな差異はなかった。17種類のイオン(K^+,Ca^<2+>,Ti^<2+>,Mn^<2+>,Zn^<2+>,Cr^<3+>,Fe^<2+>,Co^<2+>,Ni^<2+>,Fe^<3+>,Cu^<2+>,Cu^+,Ag^+,Pd^<2+>,Pt^<2+>,Au^<3+>,Au^+)について計算した結果、実験値との最大の不一致はK^+の0.6Vであり、標準偏差は0.29Vと算出された。 18年度は、水以外の配位子を含む系について、研究する予定である。
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