Research Abstract |
凍結状態にある岩石の強度・変形特性を解明するための基礎的検討として,まず,溶結凝灰岩と安山岩を対象に,空隙やき裂などの欠陥の観察を行うとともに,両岩石の含水特性について調べた。次に,含水状態と試験温度をパラメータに,溶結凝灰岩を対象とした強度試験を実施し,凍結した岩石の強度・変形特性について検討した。得られた知見は以下のようである。 (1)CCDカメラを用いて表面観察を行った結果,溶結凝灰岩にはアスペクト比の大きなポアが基質中に多く存在し,安山にはアスペクト比の小さなクラックが粒界に存在することが分かった。 (2)供試体を水中と実験室内の2つの環境に置き,含水比の経時変化を調べた結果,約2週間で含水比の変化がほとんど認められなくなった。このため,水中と実験室内に2週間以上置いた状態を,それぞれ,含水飽和状態,自然乾燥状態と見做すことにした。含水飽和状態における両岩石の含水比は大きく異なり,溶結凝灰岩では約12%であるのに対し,安山岩では約1.5%であった。自然乾燥状態における溶結凝灰岩と安山岩の含水比は,それぞれ,約0.3%,約0.02%であった。 (3)溶結凝灰岩を対象に,温度-20℃から-5℃の下で一軸圧縮試験と圧裂引張試験を実施した結果,含水飽和状態における一軸圧縮強度と圧裂引張強度は,温度の低下につれて大きくなる傾向を示すことが明らかとなった。これに対し,自然乾燥状態における一軸圧縮強度と圧裂引張強度は,ともに温度に依存せず,それぞれ,ほぼ一定の値を示すことが分かった。そして,上記の含水飽和状態における強度の温度依存性は,一軸圧縮強度より圧裂引張強度の方に強く現れることを見出した。 (4)自然乾燥状態における溶結凝灰岩の変形特性には,温度の影響がほとんど見られなかった。一方,含水飽和状態では,温度が低下するほど,限界ひずみとポアソン比が大きくなる傾向が認められた。
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