2005 Fiscal Year Annual Research Report
イットリウム系薄膜高温超伝導線材を用いた先進高安定浮磁気浮上コイルの開発
Project/Area Number |
17560735
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
柳 長門 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助教授 (70230258)
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Keywords | プラズマ・核融合 / 磁気浮上 / 高温超伝導コイル / イットリウム系薄膜線材 / 無制御磁気浮上 |
Research Abstract |
金属系超伝導材料に比べて格段に高い温度領域で使用することが可能な酸化物系高温超伝導材料については、線材化を中心とする実用化がめざましい。銀シース・ビスマス2223線材については、すでに工業製品として生産されるまでとなっており、電力ケーブルやモータ等への応用に期待が持たれるとともに、東京大学の「RT」装置においては磁気浮上超伝導コイルの巻線に用いられ、世界で初めて高温超伝導線材が核融合装置に適用された例となった。一方、イットリウム系超伝導材料は、臨界電流密度がビスマス系材料に比べて高く、次世代材料として有望である。これを用いた線材についても長尺品の製造が試みられており、大規模な核融合装置用コイルへの適用を考えると、現時点から工学的な開発研究を進めることが重要と言える。本研究では、イットリウム系薄膜超伝導線材を用いて、実際に高温超伝導コイルを製作し、磁気浮上超伝導コイルをひとつの例として、大規模コイルへの同線材の適用可能性について工学的検討を行っている。研究の初年度として、まず線材30メートルほどを取得し、それを用いて巻線を行い、小型の磁気浮上コイルを製作した。製作したコイルを外部磁場の中で液体窒素冷却し、永久電流モードとしたところ、2.3時間の減衰時定数を有していることを確かめた。減衰時定数は、コイルの自己インダクタンスと接続部の抵抗から評価される値と近い。接続抵抗については、コイルとは別に短尺サンプルを製作し、電流を通電して抵抗測定を行った。次に、浮上コイルを磁気浮上試験装置にセットし、レーザセンサによって浮上位置検出を行い、デジタル制御システムを用いて銅製吊り上げコイルの電流値をフィードバック制御することで、磁気浮上を実現した。また、デジタル制御システムを停止し、無制御状態での磁気浮上も試みた。これは、超伝導コイルの磁束保存性能を用いるものであり、研究代表者らによるこれまでの研究においてビスマス系線材を用いた浮上コイルで見出したものである。今回製作したイットリウム系線材のコイルでも同様の自己安定な浮上モードが実現することを確かめ、その特性を各物理量の計測によって評価した。一方、このコイルを用いて、基礎的な超伝導特性も調べている。特に、高温超伝導線材では、線材特性に対する外部磁場方向の異方性が顕著であるとともに、研究代表者らによる最近の研究によって、外部磁場がテープ状線材の幅広面に対して垂直に印加された場合、線材内部への磁場の侵入を阻止すべく大きな遮蔽電流が誘起され、それが非常に長い時定数で減衰するとともに、永久電流を増減させることが解明されてきた。イットリウム系線材は、フィラメント形状のまったく存在しない薄膜タイプであり、効率的に遮蔽電流が誘起されるものと考えられるため、この効果について詳細な評価を行うことは重要である。そこで、サンプルコイルに対して垂直磁場を印加できる試験装置に装着して、遮蔽電流の振る舞いを調べており、得られた結果を数値計算と比較しつつある。
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