2006 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体比を用いた水圏底生生態系食物網の解析的研究
Project/Area Number |
17570012
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 永祐 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00004482)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 弦 東北大学, 東北アジア研究センター, 教育研究支援者 (50400437)
|
Keywords | 水圏底生生態系 / 食物網 / 炭素・窒素・硫黄安定同位対比 / 底生無脊椎動物 / 餌資源解析 / バイオマス同位体比変化 / 底生珪藻 / 化学合成独立栄養細菌 |
Research Abstract |
1.強酸性湖潟沼生態系の研究においては、堆積物食サンユスリカ幼虫の飢餓条件と給餌条件での炭素・窒素安定同位体比の変化を実験的に比較し、また蛹化から羽化までの変態に伴う同位体比の変化を調べた。その結果、同位体比の大きな変化は給餌による体重量の増加にともなって起きることが明らかとなり、飢餓条件での変化は、炭素同位体比は有意に増加したものの、極めて小さいものであった。従って、ユスリカの同位体比の変化は新たな体成分のとしての炭素の付加によることが示唆された。また、蛹化から羽化の間にも、窒素同位体比は有意に増加したが、その変化は小さい。 2.河口域生態系の研究では、仙台湾名取川河口の井戸浦において、底土有機物の起源推定および泥干潟に生息する堆積物食者の餌資源解析をおこなった。その結果、井土浦の底土の炭素同位体比の値は流入河川水中の懸濁有機物(POM)の値に近く、底土有機物が主に河川由来の腐植起源であることを示していた。しかし、堆積物食者の炭素同位体比はそれよりも6‰以上高く、彼らが底土表層の底生珪藻マットを選択的に同化していることを示していた。堆積物食者が優占する底生低次食物網では、消化が良い餌である底生珪藻が生産者として重要な役割を果たすことが分かった。 3.河川生態系の研究では、河川の源流域において、底生無脊椎動物の餌物質の推定を炭素・窒素・硫黄安定同位体比解析により行った。その結果、カワニナが、他の底生動物よりも低い炭素・硫黄同位体比をもつことが分かった。このことからカワニナの餌として化学合成独立栄養の硫黄酸化細菌の寄与が予想され、河床が砂礫の源流域においても川底に嫌気環境が存在することが推察された。
|
Research Products
(4 results)