2006 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子流動パターンは何によって決まるか:ランドスケープ、送粉者、母樹による選択
Project/Area Number |
17570019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 章子 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (30361306)
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Keywords | 一斉開花 / 低地フタバガキ林 / 送粉 / 種子捕食者 / 植食者 |
Research Abstract |
本研究では、小川学術保護林(茨城県北茨木市)とその周辺の600ヘクタールで、密度の低い樹木であるハリギリを材料に花粉による遺伝子流動パターンを決定する要因を植物と送粉者の遺伝解析から明らかにすることを目的としている。ハリギリは個体レベルで雄期と雌期が分離しているため雌期の花に訪れている送粉者には自家花粉がつかず、訪花昆虫がどのような花粉を運んできているのかを探るのに適した材料である。18年度は、昨年に引き続き、花粉の遺伝子型の決定のための実験を行った。先行研究で明らかになっている7遺伝子座のマイクロサテライトを対象にマルチプレックスPCRキットを用いた増幅、AB3100による断片長の変異検出などの予備実験を行い、ほぼ使えることが確認できた。しかしながら、使用しているマイクロサテライトマーカーの精度が期待していたほど高くなかったので、追加のマーカーの開発を継続して行っている。花粉からの遺伝子抽出については、現在予備実験を行っているが、成功率が低いので、現在成功率を上げるための方法を検討中である。また、種子による遺伝子流動を明らかにするために、林内にシードトラップを設置しハリギリの落下種子と被食種子を採集してその分布を調べるとともに、種子散布に寄与している鳥類とそれらの移動範囲の観察も行った。種子散布者は原生林と断片林で異なることから、森林の状況が種子散布に大きく影響していることが示唆された。これらの種子をマイクロサテライト分析することによって、種子散布による遺伝子流動も評価するつもりである。また、昨年まいた種子の発芽を確認できたので、この種子のマイクロサテライト分析を行うことにより、遺伝的な内容と送粉者の体表の花粉の比較が可能になった。
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