2005 Fiscal Year Annual Research Report
ビタミンB12酵素、メチルマロニル-CoAムターゼの活性発現調節と新規機能の解明
Project/Area Number |
17580116
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
乾 博 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20193568)
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Keywords | ビタミンB12 / コバラミン / メチルマロニル-CoAムターゼ / ラット / 肝臓 / 初代培養肝細胞 / HepG2 |
Research Abstract |
正常ラットとビタミンB12欠乏ラットの肝臓におけるメチルマロニル-CoAムターゼ(MCM)について,ホロ酵素活性とトータル活性(ホロ+アポ酵素活性)を測定した.その結果,正常ラットでもホロ活性はトータル活性の5%以下であり,欠乏ラットではホロ活性はほとんど検出されなかった.一方,トータル活性は欠乏ラットで正常ラットの約5倍にまで上昇していた.このトータル活性の上昇がMCMタンパク質の増加によることはウエスタンブロッティングにより確認した.ところが,real time PCR法を行いmRNA発現レベルを調べたところ,mRNAレベルはB12欠乏によってむしろ低下傾向が見られた.このことから,B12欠乏によるMCMタンパク質の増加は,転写の活性化ではなく,翻訳レベルもしくはタンパク質の安定化に起因したものであることが示唆された. 次に,正常および欠乏ラットの肝臓から初代培養肝細胞を調製し,MCM活性に関する検討を行った.正常ラット由来の肝細胞を生理濃度の1000倍以上のB12存在下で培養しても,ホロ活性はほとんど増加しなかった.このことは,MCMのホロ酵素活性が細胞内B12レベル以外のファクターによって厳格に調節されていることを示唆するものである.一方,欠乏ラット由来の細胞ではB12の添加によってホロ活性の上昇が見られる(2日間の培養では正常ラット由来の細胞のレベルにまでは達しなかったが)とともに,トータル活性の有意な低下が観察された.したがって,細胞内B12レベルによってMCMタンパク質発現量が制御されていることが確認された. さらに細胞レベルでのMCM活性発現調節に関する検討を行うことを目的に,ヒト肝ガン培養細胞HepG2を培地中のB12濃度を変化させて培養しMCM活性を測定した.その結果,低濃度B12条件下(血清由来のB12のみ存在:B12濃度は生理濃度の1/10程度)ではホロ活性はほとんど検出されず,細胞はB12欠乏状態になっていることが示された.培地中にB12を添加すると濃度に応じてホロ活性は上昇したが,生理濃度の約1000倍にまで増加させてもトータル活性の5%程度にまでしか増加しなかった.一方,トータル活性はB12欠乏で若干増加する傾向が見られたが,動物で見られるほど顕著ではなかった。 MCMの新規機能の解明を目的に,MCMタンパク質と相互作用を示すタンパク質を酵母two-hybrid systemを用いて検索を進めているが,現状では目的にかなう遺伝子が得られていない.
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