2005 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯沖縄産樹木からのイソプレンガス放出の環境特性と調節メカニズムの解明
Project/Area Number |
17580129
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
屋 宏典 琉球大学, 遺伝子実験センター, 教授 (10177165)
|
Keywords | isoprene / emission / temperature response / estimation / light response |
Research Abstract |
本年度は主に人工気象室内での環境変化に対する熱帯樹木からのイソプレン放出の応答特性を解明し、熱帯樹木の放出速度を推定する新しい予測式を提案するため、以下の実験を実施した。イソプレン放出速度は樹種により大きく異なることから、環境因子に対する応答特性も樹種により違うことが予想された。そのため、放出速度の異なる樹種をそれぞれ数種選別し、人工気象室内における光強度、温度及び湿度変化が及ぼすイソプレン放出速度への影響を明らかにすることを試みた。 まず、人工気象室内の光強度を一定にした条件下で温度を変化させ、イソプレン放出速度への影響を調べた。現在最も多用されているイソプレン放出の予測式は温帯樹木からのイソプレン放出速度に基づいてGuenther等(J.Geophys.Res. 98, 609-612, 1993)により決定されたものであり、温度の影響を補正するCtのパラメーター1、2、3の値はそれぞれ95000, 23000, 314と設定されている。光強度一定下での熱帯樹木ハマイヌビワ、フクギ、ヤラブに対するこれらのパラメーターの平均値はそれぞれ209937, 321389, 312であった。これらのパラメーターを用いた場合の温度反応曲線の最大値は標準状態(30度、1000μmol/m2/s)におけるイソプレン放出速度の10倍以上にもなり、上記Guenther等の予測式を用いた場合の2倍に比べてはるかに高い値であった。このことは熱帯樹木からのイソプレン放出速度の温度依存性は温帯域の樹木とは異なることを示唆している。次いで、最もイソプレン放出速度の高かったハマイヌビワに焦点を絞り、上記パラメーターを精査した。パラメーター1、2、3はそれぞれ459654、508389、312と推定され、これらのパラメーターを用いた温度補正式は熱帯樹木からのイソプレン放出はGuenther等により提唱されているよりも遥かに温度反応性が高いことを支持するものであった。これらの結果は地球規模における主要なイソプレン放出源とされる熱帯・亜熱帯からの放出量の予測式については新たに設定する必要があることを指摘していると考えられた。
|