2005 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア域の落葉性広葉樹林における熱・水交換のモデリングとその季節的特性の抽出
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17580135
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 克典 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境フロンティア研究センター, 研究員 (80344274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 延亮 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科・農学国際専攻, 助手 (10323479)
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Keywords | 水循環 / モデル化 / 植物 |
Research Abstract |
大気-植生-土壌内の熱・水環境と土壌呼吸を再現するため、大気-植物-土壌間の蒸発散のモデルに土壌中二酸化炭素ガス・水溶液拡散過程と二酸化炭素ガス生成過程が考慮された。このモデルを乾季・雨季を伴うタイ北部の常緑林と落葉林に適用したところ、土壌温度・水分・二酸化炭素ガス濃度の鉛直プロフィールと土壌呼吸の観測結果がうまく再現された。このモデルを使った数値実験を、大気-植生間の水蒸気ガス交換を左右する葉面積指数の値を変化させて行った。その結果、葉面積指数の増加は林床の純放射量を減少させ蒸散量を増加し、この減少と増加とが土壌温度と水分量をそれぞれ低下させ、これらの低下によって土壌呼吸量も減少した。この葉面積指数増加による土壌呼吸の抑制は乾季に大きく現れる一方、可能蒸散量が少なく土壌内水分量が降水によってほぼ決められる雨季では、土壌内の熱環境の変化による影響でしか土壌呼吸が抑制されなかった。この結果の一部は論文に纏められ、英文誌に掲載される。 また上述のモデルと水文気象データを用い、タイ北部の落葉性広葉樹林の熱・水・二酸化炭素ガス交換の季節変化の再現を行った。ここで、植物の利用可能な水分量の計算に重要となる土壌水分量と圧力水頭の関係と土壌深の情報を現地で得ることができたので、この情報とともに、葉面積の季節変動も考慮して、土壌面蒸発・蒸散・遮断蒸発量が計算された。蒸散量の季節変化の結果は樹液流速の観測結果と比較され、これらの変動が似ていることが示された。また、常緑林を仮定した葉面積指数を一定とする場合、乾季途中から雨季の直前にかけて樹冠の純光合成量が負値になることが確認された。これは乾季中に水分量が低下し、蒸散をコントロールする気孔が閉じ気味になって葉温が上昇し、暗呼吸量が増加するからである。この結果はこの対象地で樹木が1年を通じて葉を維持することが困難であることを示唆する。
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Research Products
(1 results)