2005 Fiscal Year Annual Research Report
臨界期の母子分離ストレスに起因した発育期行動異常に対するラクトフェリンの改善効果
Project/Area Number |
17580256
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
竹内 崇 鳥取大学, 農学部, 助教授 (20216849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 剛仁 鳥取大学, 農学部, 助教授 (70273901)
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Keywords | ラクトフェリン / 母子分離不安 / オピオイド / カテコールアミン / 視床下部・下垂体・副腎皮質 / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
本研究では、新生子期並びに発育期の動物の脳機能が発達する"臨界期"に注目し、出生直後に母親から分離し母子間の接触が断たれる"Maternal Separation"ストレスが、発育期から成熟期の脳機能に及ぼす影響を行動学的、神経生化学的に解析し、臨界期のラクトフェリン(LF)投与が母子分離ストレスによる発育期行動異常を改善するか否かを明らかにするために以下の実験を行った。 1.母子分離条件が成長期ラットの不安関連行動に及ぼす影響の解析 生後2日〜11日の間にわたって母ラットをホームケージから離し、隔離時間を30分、2時間、5時間と変化させた。3週齢で離乳後、4週齢で高架式十字迷路試験を、6週齢でオープンフィールド試験を行った。その結果、短時間の隔離処置はストレス抵抗性を強めるが、5時間の隔離では顕著な不安行動を示した。また、同腹の半数隔離よりも全新生子の隔離によって顕著な不安行動が認められたことから、新生子の不安状態は母ラットのストレス状態の程度に強く影響されることが示唆された。隔離処置時に牛ミルク由来LF(bLF,100mg/kg,ip)を子ラットに投与することによって、発育期の不安行動は減弱され、さらに、母ラットにbLFを投与した場合に最も強い改善効果が得られた。 2.母子分離処置が成長期ラット脳の神経伝達物質代謝に及ぼす影響の解析 各々の隔離条件群について、6週齢のラットから脳を採取し、前頭皮質、海馬、偏桃核、梨状葉を切り出した後に過塩素酸を添加してホモジナイズし、HPLC-ECDにて、NE,E,DA,5-HT,MHPG,HVA,DOPAC,5-HIAAを測定した。その結果、全隔離処置によって脳の5-HTおよびNEの代謝回転は減少することが明らかとなった。 3.ラクトフェリンによる鎮痛作用機序の解析 6週齢マウスを用いて、テイルフリックテストによる疼痛評価を行い、ラクトフェリンによるオピオイド増強作用について解析した。その結果、ラクトフェリンは神経型一酸化窒素合成酵素に作用して脳内の一酸化窒素合成を促進し、さらにcGMP産生も増強することによって、μ-オピオイド受容体の作用を増強し、結果的に鎮痛作用を発揮することを明らかにした(Brain Res.,2006)。
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