2006 Fiscal Year Annual Research Report
アデノシンA2a受容体の欠損は、なぜREM睡眠期の血圧・心拍数を上昇させるのか?
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17590206
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
勢井 宏義 徳島大学, 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40206602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
裏出 良博 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
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Keywords | 生理学 / 循環器・高血圧 / 睡眠 / 神経科学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
REM睡眠期の自律動態は非常に特異的で、血圧・心拍数など大きな変動を示し、無呼吸も発生しやすい。我々は、平成15-16年度の科学研究費補助金によって、アデノシンA2a受容体欠損マウスが、野生型では見られない、REM睡眠期における血圧・心拍数の有意な上昇を示すことを明らかにした(Neuropsychopharmacology 2005)。これは、アデノシンA2a受容体がREM睡眠期の循環動態に密接に関わることを示している。また、昨年度の本研究において、不安行動に関しては、A2Aではなく、A1レセプタが関与していることを明らかにした。今年度、本研究においては、これまでの研究を発展させ、なぜアデノシンA2a受容体が欠損すると、REM睡眠期に限定した血圧・心拍数の上昇を引き起こすのか、そのメカニズムの解明を目的とした。まず、カフェインの慢性投与の影響を見た。カフェインは、非選択的アデノシン受容体のアンタゴニストである。C57BLマウスに血圧の送信器、脳波および筋電図測定用の電極をそれぞれ植え込み、回復後、睡眠と血圧との同時測定を長期におこなった。途中、給水びんの水にカフェイン(500mg/litter)を混入させ、その前後での変化を観察した。その結果、レム睡眠期の血圧上昇はほとんど観察されず、効果は見られなかった。さらに、アデノシンA2a受容体の選択的アンタゴニストであるSCH58261をDMSOに溶かして腹腔内ないしは脳内に注射し、その効果を観察した。これについても、何種類か、濃度を変化させて投与したが明瞭な変化は見られなかった。以上の結果は、アデノシンA2a受容体は、直接レム睡眠期の血圧・心拍数の変動に関わっているのではない可能性を示唆している。アデノシンA2a受容体アンタゴニストの投与は、不安状態を増悪させない。アデノシンA2a受容体欠損マウスが強い不安を示すことから、アデノシンA2a受容体欠損マウスと、アデノシンA2a受容体アンタゴニストの投与された状態とは、異なった状態にあることが分かる。今後、この差異を手がかりに検討を進めていく必要がある。
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