2005 Fiscal Year Annual Research Report
医療史から見た戦後期の予防接種法と結核予防法の研究
Project/Area Number |
17590459
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
渡部 幹夫 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (00138281)
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Keywords | 結核 / BCG / 予防接種 / 結核予防法 / 厚生省 / GHQ / 社会保障 / 日本学術会議 |
Research Abstract |
昭和26年に新結核予防法が施行され現在につながる法の体系がつくられた。当時の国民病・結核対策の重要性から、この法律は国民皆保険制度のない時代の国民に、歓迎されたものと思われる。しかし、結核の予防接種(BCG)が法の規定となったことをきっかけに、いわゆるBCG論争が医学界、国会、行政内、言論界、報道メディアで起こった。当時は昭和26年9月のサンフランシスコ平和条約調印、連合国占領の終末期に当たる。当時の論点を再検討して歴史的な評価を行った。論争の論点は二点に尽きる。(1).結核に対する予防効果が確立していないBCG接種を、法による強制接種として行うことの是非について。(2).BCG接種に伴う副反応の頻度が高く、無害なものでないこと。この二点から強制接種に反対の立場が、社会保障制度審議会と日本学術会議であり、接種推進の立場が、結核予防会及び結核予防審議会であった。個々の医学者は立場と意見が一致しない場合もあり錯綜している。当時の厚生大臣は強制接種に躊躇する態度があり、GHQは推進を明確にしていた。日本医師会の態度は不明である。一年にわたり、広く議論がおこなわれたが、衆議院厚生委員会のBCG接種推進の決議、及び、厚生大臣の辞任により、論争は政治的に終結した。この論争により、乾燥ワクチンの不確実性や接種の方法等についての問題点が明らかとなり、昭和27年から、BCG接種研究協議会が組織され、研究と接種法の改善がはかられた。日本の接種方法は国際的に一般的な方法ではないが、副反応の少ない方法となった。社会医学的側面の強い結核対策について、昭和26年の結核予防法成立施行時に広く起こったBCG論争を、53年後の平成16年法改正の内容に照合すると、興味深い問題を多数含んでおり、医学的論争を社会が共有することは必要なことと考えられる。この結果について二学会にて発表した。
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Research Products
(2 results)