Research Abstract |
1型糖尿病の主要抗原である,インスリンB鎖(B:9-23)関連ペプチドを用いた粘膜投与(経鼻、経口)による糖尿病発症抑制法の開発を目的とし,以下の基礎的検討を行った。 1 経鼻免疫:4種類のペプチド「B:9-23p,B:11-23p,B:9-21p,B16,19A-APL(アナログ)」とコレラトキシン(CT)の混合液を若年NODマウスに経鼻投与し,糖尿病進展への影響を検討した。 (1)B:9-23p/CT,B:11-23p/CTの経鼻投与にて,インスリン自己抗体発現増強,膵島炎の進展促進効果を認めたが,糖尿病発症抑制効果は不十分であった。 (2)B:9-21p/CT,B16,19A-APL/CT経鼻投与にて良好な発症抑制効果を認めた。特に,B16,19A-APL/CT投与はインスリン自己抗体発現および膵島炎進展を強力に抑制した。 (3)糖尿病発症直後マウスに対し,B16,19A-APL/CT経鼻投与を行い,コントロールに比し有意に高頻度(67%)に,糖尿病寛解効果を認めた。 以上の結果から,経鼻免疫には,B:9-21pB16,19A-APL等,細胞障害性T細胞の反応性の低いペプチドの選択が重要であることおよび,B:9-23アナログによる自己免疫反応の抑制および寛解誘導の可能性が示された。 2 経口免疫:経鼻免疫にて発症抑制効果が強かったB16,19A-APLとコレラトキシンの毒性欠損したBサブユニット(CTB)の融合蛋白発現酵母を作製し,経口投与による糖尿病進展への影響を検討した。 1)酵母内蛋白発現量は、経口量約100ng(ペプチド換算)と低く,経口投与はインスリン自己抗体の発現に影響しなかった。 2)CTB-A16,19APL発現酵母の経口投与は,糖尿病発症抑制傾向を示した。 今後、発現宿主,蛋白発現量等の検討を加え,より発症抑制効果の高い治療法の開発が必要である。
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