2005 Fiscal Year Annual Research Report
病原菌・宿主細胞の相互作用をターゲットとしたグラム陰性菌の感染機構の解明
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17591038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西岡 弘晶 京都大学, 医学研究科, 助手 (20397540)
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Keywords | グラム陰性菌 / 赤痢菌 / 感染機構 |
Research Abstract |
グラム陰性病原細菌の多くは、宿主細胞と接触すると、特殊な分泌機構を通じて、エフェクターと呼ばれる一群の分泌性機能蛋白質を宿主細胞質へ注入し、感染に必要な機能を誘導する。しかし、この分泌の分子メカニズムやエフェクター蛋白質と宿主形質膜との相互作用に関しては、多くのことが解明されていない。本研究は赤痢菌をモデルとし、エフェクター蛋白質と宿主因子の時間的・空間的相互作用を明らかにし、グラム陰性菌感染の分子機構を明らかにし、新たな治療法の開発につなげることを目的とする。赤痢菌のエフェクター蛋白質として、宿主細胞への感染に不可欠なものは、IpaB、IpaC、IpaDと呼ばれる3つの蛋白質であり、菌体外でIpaBとIpaCは複合体を形成している。赤痢菌よりネイティブな形で精製したIpaB/IpaC複合体の分子量は、analytytical ultracentrifugationやゲル濾過クロマトグラフィーにより200-250kDと推定され、circular dichroism spectroscopyや温度安定性の解析から高度な二次構造を有していることが推定された。IpaB/IpaC複合体と真核細胞との相互作用の解析では、IpaB/IpaC複合体は、赤血球膜にはコレステロール依存性に、培養上皮細胞膜にはコレステロール及びCD44依存性に結合した。その際IpaB/IpaC複合体はリピッドラフトに局在した。リボゾームとIpaB/IpaC複合体との結合を調べたところ、複合体はコレステロールおよびフォスファチジルセリンを含むリポゾームに強く結合し、その結合は尿素や塩での処理に抵抗性であった。これらより、IpaB/IpaC複合体は細胞膜の脂質と強く結合し、安定化することが示唆された。また電子顕微鏡による解析では、IpaB/IpaC複合体は直径およそ10nmの球状の粒子として観察された。
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