2007 Fiscal Year Annual Research Report
被害者陳述の信頼性・信憑性評価法の開発:心的外傷の法延評価のために
Project/Area Number |
17591212
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
岩井 圭司 Hyogo University of Teacher Education, 学校教育研究科, 教授 (20263387)
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Keywords | 心的外傷 / 外傷後ストレス障害 / PTSD / 精神的被害 / 精神鑑定 / 民事賠償裁判 |
Research Abstract |
昨年度までに、本研究では、ミネソタ多面人格目録(MMPI)のサブスケールとして米国で開発された「PK尺度」の日本語版がわが国においても有効性が高いことを初めて示した。また、MMPIの標準下位尺度の単純1次線形結合による「M-PTSD Index」を開発した。このM-PTSD Indexは、PK尺度とほぼ同程度の峻別力を有していた。 今年度は、真のPTSD患者("真群")と、ボランティアによるニセのPTSD患者("偽群")における出来事インパクト尺度改訂版(IES-R)の再検査法による回答行動を比較した。その結果、2週間後の再検査における回答の保存性(再現性)は、意図的に回答を再現することを指示された偽群よりも真群の方が有意に高かった。つまり、自己の自覚症状に忠実に依拠して回答する者は、虚偽の症状を記憶に頼って再現しようとする者よりも、再検査において回答の保存性が高いといえた。 IES-RのようにPTSDの症状を直接問うような質問紙であっても、再検査における保存性を検討すれば、被験者の回答の信頼性はかなりの程度において評価可能であると考えられた。また、IES-Rと前述のMMPI系の評価法とを組み合わせることで、被害者が報告するPTSD症状の信頼性をより立体的に評価できると考えられた。 これまでともすれば臨床医は「患者の心的現実を重視する」という名目のもとに患者(被害者)の陳述の信頼性を吟味することに消極的であったが、本研究のような評価法の開発によって、治療関係を損なうことなく患者の陳述の信頼性を評価することが可能になると考えられた。
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Research Products
(1 results)