2007 Fiscal Year Annual Research Report
幼年期の心理的ストレスが向精神薬の反応性に与える影響の薬理学的基礎の解明
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17591219
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒木 俊秀 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 准教授 (60215093)
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Keywords | ストレス / 発達 / 脳内微小透析法 / ドパミン / ノルエピネフリン / 薬剤反応性 / セロトニン受容体 |
Research Abstract |
1)情動の発達とストレス脆弱性の神経生物学的基盤を明らかにするために、前年度に引き続き、ラット中脳-辺縁系・皮質系ドパミンニューロン系に対するドパミンD_2受容体パーシャルアゴニスト型新規抗精神病薬、aripiprazoleの薬理作用について検討した。前年度の研究においてaripiprazoleの前頭前野への直接投与は同部位のドパミン遊離を促進し、その作用は5-HT_<1A>受容体の活性化を介するものであることが示唆された。今年度の研究においてaripiprazoleを側坐核へ直接投与したところ、同部位のドパミン遊離は減少したことから、aripiprazoleの影響は中脳-辺縁系と中脳-皮質系では異なることが示唆された。以上の所見からストレス脆弱性の基盤には前頭前野5-HT_<1A>受容体が関与する可能性が推定され、発達過程における同受容体の発現と成熟が向精神薬の反応性にも影響を与えると示唆される。 2)幼年期の心理的ストレスではコルチコトロピン放出因子(CRF)が上昇し、発達段階のモノアミンニューロン系の構築に永続的な影響を与えると推測されることから、ラットを用いて中脳-皮質系ドパミンニューロン系に対するCRF_1受容体アンタゴニスト(経口投与)の作用について予備的検討を行った。CRF_1受容体アンタゴニスト単独では成熟ラット(6〜8週齢)の前頭前野ドパミン遊離に有意の影響を与えなかったが、拘束ストレスによる前頭前野ドパミン遊離の亢進がCRF_1受容体アンタゴニストの前処置により拮抗された。しかしながら、3週齢の幼若ラットでは同様のCRF_1アンタゴニストの作用は認めなかった。以上のことから、CRF_1受容体を介するストレス誘発性ドパミン系活動は成熟ラットのみに生じることが示唆され、発達段階においてCRF_1受容体の生理的機能が変化する可能性が推測されたが、ストレスに対するドパミン系の反応自体が個体差が大きいことから、さらに検討する余地を残している。
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Research Products
(7 results)