2005 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠中の記憶整理仮説に基づく機能的MRIを用いた学習記憶の神経基盤に関する研究
Project/Area Number |
17605010
|
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
佐々木 寛 玉川大学, 学術研究所, 助教授 (70261691)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 聡 山形大学, 医学部, 助教授 (80173384)
|
Keywords | 学習・記憶 / 睡眠 / シナプス可塑性 / 機能的MRI |
Research Abstract |
今年度は、睡眠を介して固定される記憶と消去される記憶がほぼ同数となる機能的MRI向きの記憶課題の開発と、固定されやすい「強い記憶」と消去されやすい「弱い記憶」の記銘を司る脳内過程の機能的MRIによる解析を行った。 1.記憶課題の開発 漢字二文字からなる単語100語を記憶する課題を20名(男性、19〜38歳)に対して実施したところ、睡眠を介した24時間後の再認率は19〜94%であり、個体差が大きいことがわかった。このばらつきは難易度を変えても同様に存在し、また平均再認率が68%、MRIの解析が可能となる基準(再認率25〜75%)を20名中17名がクリアしたことから、記憶する単語数を100語に固定し再認率25〜75%のデータを解析することとした。 2.記銘を司る脳内過程の解析 1で開発した単語記憶(記銘)課題を行い、その直後と24時間後に再認試験を実施した。記銘課題遂行中の脳活動を機能的MRIにより計測し、再認試験の成績により再認できた単語の記銘に関わる脳活動を、直後再認によるものと24時間後再認によるものとで解析し比較した。その結果、直後再認の結果による解析で再認できた単語とできなかった単語の記銘に関わる脳活動に有意差があって、さらに24時間後再認の結果による解析でも同様の有意差を認めた領域と、直後再認の結果による解析では有意差が認められず、24時間後再認の結果による解析でのみ有意差を認めた領域とが同定された。前者は、右海馬、背側の下前頭回であり、後者は左上前頭回、左中前頭回、腹側の下前頭回、左中側頭回、左右中後頭回、左舌上回、右海馬傍回であった。これらの結果から、「弱い記憶」の記銘には海馬および背側の下前頭回を含む領域の活動が本質的であるのに対し、「強い記憶」として固定するためには、それらの領域ほかに左上前頭回、左中前頭回、腹側下前頭回ほかの領域の活動が重要であると考えられた。
|