2006 Fiscal Year Annual Research Report
好アルカリ性細菌のNa^+チャネル欠損によって生じる走化性異常の分子機構の解明
Project/Area Number |
17613004
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
伊藤 政博 東洋大学, 生命科学部, 助教授 (80297738)
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Keywords | 好アルカリ性細菌 / 極限環境微生物 / ナトリウムチャネル / 走化性 / Bacillus pseudofirmus |
Research Abstract |
2004年に好アルカリ性細菌Bacillus pseudofirmus OF4株(以下OF4株と省略)の膜電位開閉型NaチャネルNa_vBPがクローニングされ、その欠損株の構築、生理的機能が調べられた。その結果、Na_vBP欠損株は高アルカリ性環境での細胞内pH調節能が低下すること以外にタンブリングの頻度が上昇し、誘引物質や忌避物質に対して野生株と反対の反応を示すことが明らかになった。しかし、この走化性異常の原因は解明されていない。 2006年度は、OF4株とその運動性向上株のべん毛の形成およびフラジェリンの発現と培養pHとの関係に着目して基礎データの取得を行った。フラジェリン蛋白質の発現はpHに依存していなかった。また、培養pH7.5〜10.3においてOF4株の野生株は約1本、運動性向上株は約2〜3本のべん毛が観察された。pH10における運動性向上株の細胞外フラジェリン量は野生株の約3.9倍であった。次に様々なpH、Na^+濃度、粘性条件下における運動性の解析を行った。アルカリ複合培地で培養した野生株の液体培地中での遊泳速度を測定したところ、10mMNa^+を含むpH8以下の培地では運動性を示さなかった。しかし、高Na^+濃度の培地ではpH7でも運動性が観察された。pH8からpH11における遊泳速度は、Na^+濃度230mMまではNa^+濃度の対数的増加に伴い直線的に増加した。pH7ではNa^+濃度230mM以上でも遊泳速度が増加した。野生株の最適遊泳速度は、pH10、Na^+濃度230mMであった。また、運動性向上株の運動性は、通常の液体培地中では野生株とそれほど変わらなかったが、PVPなどの増粘性物質を含む液体培地や寒天濃度0.3%のアルカリ性軟寒天培地上では野生株よりも明らかに高い運動性を示した。
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