2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17652013
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木俣 元一 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00195348)
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Keywords | 西洋中世 / イメージ / 美術史 / 複製 / 権力 / コピー / キリスト教文化 / 画像論 |
Research Abstract |
聖画像における複製の問題に関する調査と研究をより発展させ、とくに12-13世紀の美術の中に表現された聖像について、テオフィルスをめぐる聖母伝説などを表現する浮き彫りや写本挿絵において、聖母を象る彫像と実物の聖母がいかに描き分けられるかを考察した。また、ヤコブス・デ・ウォラギネによる『黄金伝説』や13世紀に隆盛した説教集にみられる聖像に関わる伝説を調査し、聖像と実物との関係について考察を進めた。 キリスト教の画像論における複製の問題に関して考察を進め、とりわけスコラ学における13世以降の画像論に依拠しつつ、本来は不可視であるはずの神と画像との関係がどのように理論化され、キリスト教ではモーセの十戒をはじめ本来禁止されているはずの美術を対象とした礼拝行為がいかに正当化されるのか、を明らかにしようとした。その過程で、上述の美術表現や伝説における聖像への態度と比較し、理論と実践とのあいだの齟齬について考察し、キリスト教の信仰実践に美術を導入した結果もたらされた問題が円環状に先送りされている状況を明るみに出すことに成功した。 貨幣・印章などの複製手段とその使用様態に関する調査と考察を継続し、貨幣や印章等の複製製作手段が真正性を証明するために,どのように使用されたか,とくにオリジナリティという近現代の価値観,写真という新しい複製手段との相違や類似性を念頭におきながら考察を行った。 また、模倣という行為には、意図的な描写を通じて複製を生み出すほかに、雲や壁に生じた汚れなどチャンス・イメージと呼ばれるものが対象との類似性に関する認識を心に喚起することも古来議論されてきたことも今後の研究課題として重要であるという結論も得ることができた。
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Research Products
(2 results)