2006 Fiscal Year Annual Research Report
映像翻訳論:日本映画とアニメにおける字幕・吹替版の翻訳研究
Project/Area Number |
17652022
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
米井 力也 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (50178373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 由美 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (60153326)
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Keywords | 日本文学 / 映像翻訳 / アニメーション / 侍 / キャラクター / イメージ |
Research Abstract |
本年度は、宮崎駿監督作品についてシナリオ対照表の作成がほぼ完了した。翻訳研究としては、英語吹替版におけるキャラクターの変化について、『千と千尋の神隠し』のリンと『魔女の宅急便』のジジをケーススタディとして細かく検討した結果、英語吹替版においては、脇役の女性がいずれも<自立した強い女性>として描かれていることが判明した。 そのことによって原作の雰囲気がそこなわれるという批判もあるが、本研究においては、原作と英語吹替版のそれぞれが別のテクストとして読みとられるべきであるという立場を堅持したい。その意味で、テクストという概念をめぐる研究分担者との議論は避けて通ることのできないことだった。キャラクターに変化があったとしても、それ自体を非難する必要はない。むしろ、なぜそのような変化が生じたのかということを考えることが大切なのである。 英語吹替版で<自立した強い女性>として描かれた二人の女性は、原作では必ずしもそのような存在として描かれてはいない。だとすれば、翻訳にあたって英語圏固有の問題が投影していると考えるほかないだろう。そこには日本語から英語への翻訳の問題だけではなく、二つの文化における「規範」意識の差異が反映していることを認識する必要がある。 その意味で、今後、映像翻訳の研究をすすめるうえで、世界における日本アニメーションの受容の問題について、各国文学の研究者との共同研究は不可欠だという認識をあらたにした。今年度はこの問題についてさらに掘り下げるべく、「<侍>の表象」というテーマで、欧米における武士のイメージの受容の問題について多角的に考察したいと考える。
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