2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17653003
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
DAVID Askew 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 助教授 (90343722)
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Keywords | 探偵物語 / 犯罪人類学 / 科学捜査 / ロンブローゾ / 指紋 / 嘘発見器 / 犯罪学 |
Research Abstract |
19世紀の英米両国に、探偵物語という新種の文学ジャンルが誕生した。探偵物語という新しい言説空間では、同時代の犯罪人類学の洞察がしばしば駆使され、また同時代に発明されつつあった犯罪捜査技法という新しい科学的技法がたびたび用いられていた。従来、文学、人類学、そして犯罪学における動きがそれぞれ独立して発展してきたかのように看做されてきたが、本研究プロジェクトでは、それぞれが相互に作用してきたこと、そしてその相互作用の結果、犯罪人類学や近代的な犯罪捜査技法が、探偵物語によって、客観的で科学的な根拠に基づくものとして正当化されたことを明らかにすることを目的としている。 本年度は、とりわけロンブローゾの犯罪人類学の検討に精魂を傾けてきた。ロンブローゾが活躍していた当時のイタリアでは、イタリアを南部と北部とに峻別して、この地理的区別とは人種的区分にも相当する、という議論が行われていた。南部という地域には、北部とは異なる南部人種が存在するという認識に立って、犯罪を説明しようとする傾向もあった。北部人種を優秀人種とし、南部人種を何かしらの意味で劣っている(文化的に劣っている、あるいは遺伝的に劣っている)ことが、犯罪の発生と深い関係がある、という。以上の認識に立って、ロンブローゾは、近代科学をもって、「犯罪」の類型化ではなく、むしろ「人間」の類型化に躍起になっていた。換言すれば、危険な「人種」を確認することにより、犯罪の取締に資するという考え方を打ち出していた。この犯罪人類学はやがて小説家の言説にも取り入れられるようになり、定着していった。 小説家は同時に様々な科学捜査を考案している。近代日本の人類学にも影響を色濃く及ぼしてきたE・S・モースも注目していた指紋が好例であろう。したがって、以上のロンブローゾに関する考察に加え、探偵物語における科学捜査(嘘発見器や指紋など)の登場を確認する作業にも着手した。
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Research Products
(5 results)