2005 Fiscal Year Annual Research Report
高次脳機能障害者が自助グループにおいて自己を再形成するプロセスに関する発達的研究
Project/Area Number |
17653076
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
脇中 洋 花園大学, 文学部, 助教授 (10319478)
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Keywords | 高次脳機能障害 / ピアサポートシステム / ピアサポーター養成プログラム / ネットワーク / 当事者主義 / 自己認識 / 再適応 / 自己変容 |
Research Abstract |
本研究は、高次脳機能障害者がピアサポートシステムへの参加を通じていかなる自己変容を遂げるかについて、その発達過程の体系的な解明を目的としている。この目的遂行のため平成17年度は、9月と2月にそれぞれ半月間ずつカナダ・ブリティッシュコロンビア州ビクトリア市を拠点としてフィールド調査を行なった。 主な訪問先は、高次脳機能障害者の当事者団体Vancoever Island Head Injury Societyをはじめ次の通り。Vancoeber Island Health Aouthority, Nanaimo Brain Injury Society Macdonald House(グループホーム),Sea Isle(木材加工作業所),Avadeen Hospital, Queen Alexandra Centre for Children's Health, Salvation Army Addiction and Rehabilitation Centre, Victoria Parole Office of Correctional Service(犯罪者更正施設) これまでにピアサポーター養成プログラムの内容と実践についての調査も行なうとともに、20代から60代のカナダの当事者11名、日本の当事者4名、カナダの関連9機関のスタッフ11名に対してインタビューを行なった。また、当事者の変容を支えるネットワークの様相を調べるために、関連機関の担当者から話を聞き、資料の提供を受けた。 その結果、ピアサポートプログラムやネットワークの考え方のポイントは、「当事者の主体性を取り戻すこと」「一人のスタッフで抱え込もうとしないこと」の2点であることが明らかとなった。 これらの調査結果をまとめて、3月末の日本発達心理学会においてポスター発表を行なった。その発表にも記したように、カナダの多くの当事者は他者と出会い、果敢に新たな自己に新たな自己の再構築に挑んでいることが見出された。つまり当事者主義の徹底がネットワークの形成につながっていると言うことができる。今後は回復途上にある当事者を注意深く調べること、日本の当事者の自己認識や再適応を阻んでいる要因を探り、日本版ピアサポーター養成プログラムにつなげることが課題となる。
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