2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17656201
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒田 龍二 神戸大学, 工学部, 助教授 (40183800)
|
Keywords | 神社 / 地域社会 / 瀬戸内海 / 厳島神社 / 門前町 |
Research Abstract |
本年度は広島県の厳島神社の建築と門前町に関する基礎資料を収集した。 厳島神社は、瀬戸内海の要衝に位置する古い神社で、平清盛によって現在の社殿の概形が形作られたと推定される。古代においては、神社の所在する宮島は神聖視され、島内に人が住むことはなかったと言われる。しかし、一遍上人絵伝の厳島神社の情景では、神社の西側、東側に民家と思われる屋根が描かれている。これらが全て特殊な神官や僧の住宅とも考えられないので、遅くとも鎌倉時代には厳島に俗人が住んでいたと考えられる。 近世においては厳島神社周辺には門前町が発達し、非常に栄えていた。その様子は、いくつかの厳島図屏風によって具体的に知ることができる。厳島図屏風は、17世紀からその例が知られる名所図屏風のひとつで、松島、和歌ノ浦などの名所と一双のものとして製作される場合が多いが、なかには厳島だけで一双をなすものもある。いくつかある厳島図屏風の検討を通じて、建築的な描写から信頼性が高いと考えられるのは、松本山雪筆の厳島図屏風(東京国立博物館蔵)である。松本山雪は、生年は不詳であるが延宝4年(1676)に没したことが知られているから、屏風の景観は17世紀のものであることが確かである。この屏風の絵によると、町は神社の東側に発達している。町屋は平入、板葺でウダツをもつ町屋形式である。また通常の商家の地域のはずれには、娼家の地域があり、遊廓が形成されていた様子も描かれている。 次年度は、史料がふえる近代以後、また現在の景観と比較することにより、門前町の変化を調査する。そのような作業を通じて、神社と地域との関係を考察する。
|