2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポリコーム遺伝子を手がかりとした生活史、特に世代交代進化多様性創出機構の解明
Project/Area Number |
17657033
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
長谷部 光泰 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 教授 (40237996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日渡 祐二 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (10373193)
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Keywords | 世代交代 / ポリコーム / 生活史 / ヒメツリガネゴケ / 進化 / 配偶体 / 胞子体 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
ポリコームグループ遺伝子は3種類の遺伝子(C3H2型ジンクフィンガー遺伝子、SETドメイン遺伝子、WD40遺伝子)の総称であり、これらがヒストン脱アセチル化酵素と複合体を作って染色体に結合し、染色体の状態を変化させる。シロイヌナズナでは、3種類の遺伝子のうち前2者は複数個がゲノム内に存在し、組み合わせが変わることで異なった発生プログラムを制御している。昨年度のヒメツリガネゴケゲノム解析によって明らかになったシロイヌナズナのVRN2/FIS2/EMF2/EMF2-like遺伝子オーソログであるPpEMF1,2,3、FIE遺伝子オーソログであるPpFIE、MSI遺伝子オーソログであるPpMSI、CLF/EZA1オーソログであるPpCLF遺伝子の遺伝子破壊体を作出した。1倍体組織である原糸体由来のプロトプラストを用いてPpCLFとPpFIEの各々の遺伝子破壊を行ったところ、両者ともに胞子体様の組織を形成した。形質転換後の原糸体はしばらく成長を続けるが、分岐時に胞子体頂端細胞に酷似した細胞が形成され、その後、胞子体初期発生過程と良く類似した細胞分裂様式を行う。胞子体は頂端分裂細胞が分裂活性を持つ時期と柄分裂組織が形成され胞子嚢形成が起こる時期の2段階に分けることができるが、各遺伝子破壊体では、前者の発生段階のみ観察され、後者の発生段階へは移行しなかった。3つのPpFIS遺伝子それぞれの遺伝子破壊体を作製したどれも野生型と区別できなかった。これは、各遺伝子に機能冗長性があるためではないかと考えられ、機能解析には3重遺伝子破壊体の作出が必要であろう。また、各遺伝子のGUS融合ラインを作製し、1倍体で発現していることがわかった。以上より、本研究によりPcG遺伝子がヒメツリガネゴケにおいて世代交代を制御しており、今後の生活史進化研究の鍵となることがわかった。
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