Research Abstract |
本研究の主要目的は,感温磁性体を用いることにより,自働温度制御機能を持たせ,さらに磁性体を金属環で取り巻いた構造の発熱素子を用い,体外から交流磁界を印加するソフトヒーティング法の実現を目指している.今回は,このソフトヒーティング法の一例として,皮膚等体の浅部への適用を想定し,励磁構成と実際のマウス腫瘍への適用について基礎検討を行い,この成果を多臓器へも波及する事とした. 検討事項としては,体の浅部への応用を考えると,励磁構成として深部ほど大きなエネルギー伝送を必要としないため,小型励磁素子が可能となる.実際に臨床応用を考える上で,スパイラルコイルによる励磁が圧迫度や複数本励磁への対応を行い易いといった利点がある.そのため,このスパイラルコイルでの励磁を考え,外径110mm,内径20mm,50turnsのスパイラルコイルの試作を行った.このコイル背面に磁性材料を配置し,磁束密度特性を測定した.このような最適設計を行ったスパイラルコイルを用いることによって,磁性体の効果により同電流値で高い磁束密度を得ることができ,励磁装置の電流値の面での利点が大きい結果が得られた. 続いて,Ni-Cu-Zn系フェライト(0.6mm×0.6mm×10mm,キュリー温度:70℃)と金属環(厚さ0.05mm)から構成される発熱素子を4本用い,5匹のマウスの腫瘍(B-16 melanoma,腫瘍サイズ:約400mm3)の加温実験を行った.励磁条件は200kHz,6mTであり,スパイラルコイルを使用して実験を行った.取得データとしては,腫瘍辺縁部と直腸の温度特性である.5匹すべてのマウスにおいて,10分以内に腫瘍辺縁温度が腫瘍壊死温度を超える45℃に到達していた.また直腸温度は体温の指標を示す事から,常時モニタリングを行ったが,直腸温度は上昇が見られないため,腫瘍の加温による体温への影響はないと考えられた.これにより,腫瘍全体を局所的かつ高温まで加温できたといえ,本方式の実用化検討に係る基礎事項の確認が行えた.
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