Research Abstract |
地震工学をはじめとする広範な工学分野において,計算機の処理の能力の向上により,構造物の挙動の精緻な解析が可能となってきている.しかし,工学的問題においては不確定性が不可避な因子も多く,例えば,地震動特性や構造物の強度に不確定性を見込むことは本質的な問題である.地震応答解析の場合,入力波の不確定性の程度が大きく,また,非線形応答解析の場合,部材の非線形挙動が応答に与える影響も大きく,モンテカルロ法の計算量が膨大になったり,近似誤差が蓄積して実用的な精度を確保できない等の問題を有することも多い.本研究は,そのための効率的かつ実用的な解析手法の開発を目指すものである. 17年度は,地震動の不確定性のモデル化のための基礎資料とするため,複素ウェーブレット関数を用いたウェーブレット解析手法を用いて,実際の強震記録を用いて,本震や複数の余震の強震観測記録に基づく解析をおこなった.これにより,本震と余震の類似性などについての基礎的な地圏を収拾した.また,スペクトル確率手法についても,これまでに開発した手法に基づいて非線形動的問題へ適用可能なプログラムを構築した.不確定性を有する地震波を入力として,バイリニア降伏特性等の非線形挙動を示す構造系を対象とした数値シミュレーションを実施し,解析の安定性等について検討した.解析は,線形系及び非線形性の弱い系を対象として行い,この計算結果に基づき,適用範囲やアルゴリズムの有効性についての知見を得た.不確定性や非線形性の強い問題においては従来の手法を適用するだけでは十分な精度が得られないことが明らかになり,新たな対処法を高じる必要が認められた.そのための検討も行い,最終的な方法論は確立していないが,対処法の概ねの方向性については提案をすることができ,その有効性について,予備的な検討を行うことができた.(774文字)
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