2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物のhydraulic lift現象における水放出経路の解明
Project/Area Number |
17688015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 勝也 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (00283424)
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Keywords | 水素安定同位体 / 蛍光X線解析 / 菌根共生系 / 根系形態 / 不均一系 / 乾燥地 / 灌漑 / hydraulic lift |
Research Abstract |
植物が野外で遭遇する環境は、実験室レベルの研究で採用されているような均一な環境条件とはほど遠く、むしろ不均一性を特徴としている。このような不均一な環境条件下の植物は、均一な環境条件で得られる結果からは想像もできない特殊な振る舞いを示すことがある。例えば、乾燥地で植物が深い根を発達させて地下水を吸収する一方で、表層の乾いた土壌に水を散布する現象(hydraulic lift)である。本研究は、hydraulic lift現象における水の放出経路を解明するとともに、この現象への関与が予想される要因(根系形態の変化や根内部に共生する菌根菌など)との相互作用についてもあわせて検証することを目指す。 まず、植物根からの水放出経路を解明するための方法論の開発を試みた。すなわち、植物根の導管から種々のトレーサーを取り込ませて蛍光X線解析を行い、導管内部の水の動きと同調したトレーサーを非破壊的に検出してみた。その結果、いくつかの元素がトレーサーとして有望であることを確認し、次年度以降さらに検証を進める。 不均一な土壌水分条件下での植物の水吸収能が、根の内部形態に規定されている可能性を示す結果が得られた。そのような環境条件の典型例である天水田において、硬盤層を境に土壌水の水素安定同位体比が著しく異なっており、植物がその環境で引き起こすhydraulic lift現象の検証に利用可能であることを確かめた。 hydraulic lift現象の制御には、根系形態を局所的に変化させることが重要と考えられる。リンの局所施肥や菌根菌との共生関係が根系形態を著しく変化させることを確認した。また、菌根菌が宿主植物の根に選択的に窒素を供給することを見いだした。
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Research Products
(5 results)