2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物のhydraulic lift現象における水放出経路の解明
Project/Area Number |
17688015
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 勝也 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 助手 (00283424)
|
Keywords | 不均一系 / 蛍光X線 / 元素マッピング / 灌漑 / 乾燥地 / 根系 / 水素同位体 / hydraulic lift |
Research Abstract |
植物が野外で遭遇する環境は、実験室レベルの研究で採用されているような均一な環境条件とはほど遠く、むしろ不均一性を特徴としている。このような不均一な環境条件下における植物は、均一な環境条件では想像もできないような振る舞いを示すことがある。その一例が、乾燥地で植物が深い根を発達させて地下水を吸収している一方で、表層の乾いた土壌に根から水を放出する現象(hydraulic lift:)である。本研究は、hydraulic lift現象における水の放出経路を解明することを目的としている。 まず、植物根からの水放出経路を追跡するための方法論に取り組んだ。すなわち、hydraulic liftが起きた状態での水の動きを、植物根の導管にあらかじめ取り込ませたトレーサーの追跡を試みた。一部の根からトレーサーとしてセシウムやルビジウムを取り込ませた根系を、高浸透圧条件のゲル上に展開することでhydraulic liftを引き起こさせた。蛍光X線解析装置を用いて、ゲルを含めた根系全体の2次元元素マッピング画像を得ることで、非破壊的にトレーサーの動きを捉えることができた。また、根を切断して露出させた導管から色素を取り込ませ、根系を高浸透圧条件の溶媒に展開しても、光学顕微鏡で容易に導管内を移動する色素を観察することができた。 上層・下層に分かれた栽培容器を用いて、深根性植物6種のhydraulic lift能を比較した。供試したいずれの植物種もhydraulic liftによって下層部から上層部へと水を供給したが、その供給量には種間差が大きかった。根量当たりの水放出能を調べると供試した5種の植物間では有意差が認められず、これら5種の植物では根量の違いが水放出量を規定していたと考えられる。これに対して、1種の植物は著しく高い水放出能を発揮しており、放出経路を含めてその原因を追及していく予定である。
|
Research Products
(3 results)