2005 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤性有害事象の発生率、防止可能性に関する臨床疫学的研究
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17689022
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 剛 京都大学, 医学研究科, 講師 (30378640)
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Keywords | 薬剤性有害事象 / 薬剤関連エラー / 医原性疾患 / 医療安全 / コホート研究 |
Research Abstract |
本研究は日本における薬剤性有害事象や薬剤関連エラーに関する臨床疫学的データを科学的に収集し、それらの発生率や発生に関連する因子、患者側の認識を解析し、薬剤性有害事象や薬剤関連エラーの防止可能性や効果的な対策を分析するものである。また同時に、薬剤性有害事象や薬剤関連エラーの発生を定量的に予測する予測モデルを作成し、臨床現場や健康政策に還元することも目指している。平成17年度の研究では、倫理委員会で承認された国内3教育病院で無作為に選択した診療科に6ヶ月間に入院した全患者について、前向きコホート研究を行った。さらに、平成18年度以降の外来患者での前向きコホート研究や一般市民に対する横断研究の準備を行った。入院患者における前向きコホート研究では患者の採用及びフォローアップが終了し、独立医師レビューワーによる客観的な判定法を用いた再評価を行っている。この期間に3295人の患者が採用され、4016件の潜在的薬剤関連イベントが抽出された。現在までに再評価が終了した5診療科(内科系2;外科系2;集中治療部門1)での1ヶ月間の入院患者331人の結果では、患者の年齢の中央値が71歳で男性が64%であった。23%の患者の主治医は卒後3年未満の医師であった。入院中の死亡率は13%であり、観察日数は5428 patient-daysであった。この期間における薬剤性有害事象は63件であり、100入院当たり19.0件[95%信頼区間(CI):14.8-23.3]、1000 patient-days当たり11.6件[95%CI:8.8-14.5]であった。これは件数だけを見ると、共同研究者であるBatesらが1995年に米国の教育病院の調査した際における6.1件/100入院[95%CI:5.4-6.9]よりも多くなっているが、入院期間で調整すると11.5件/1000 patient-days[95%CI:10.1-13.0]と、ほぼ同等であることが示唆された。今後、このデータについて再評価を完成させ、日本における医療の安全に役立てる予定である。
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