2005 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の未分化性維持機構の解明 -レドックスと自己複製-
Project/Area Number |
17689030
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90383710)
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Keywords | p38MAPK / 活性酸素 / ATM / 自己複製能 |
Research Abstract |
Atm(ataxia telangiectasia mutated)欠失マウスの解析から、ATMによる幹細胞の未分化性維持機構においてレドックス制御が重要な役割を果たしていることを突き止めた(Ito et al.Nature.2004;431:997-1002)。さらにATM欠失は活性酸素産生を介してp16^<INK4a>・p19^<ARF>の発現を上昇させ造血幹細胞の自己複製能が低下することを見出している。以前より活性酸素の上昇によるp16^<INK4a>・p19^<AEF>の発現調節にMAPK(mitogen activated protein kinase)の関与が数多く報告されているが、各種MAPKの活性測定の検討からAtm欠失造血幹細胞においてp38MAPKが特異的に活性化していた。また、MAPK特異的阻害剤がATM欠損による造血幹細胞機能低下を回復させることが判明した。 野生型造血細胞機能に対する活性酸素産生の影響を検討したところ、造血幹細胞特異的にその機能低下を起こした。その際の各種MAPK活性及びその阻害剤の効果の検討から、野生型造血幹細胞においても、活性酸素産生が造血幹細胞特異的にp38MAPK活性化を介してその機能を低下させることが判明した。造血幹細胞の細胞周期の検討からp38MAPK活性抑制は造血幹細胞の静止状態の維持にも不可欠であることが判明した。さらにp38MAPK阻害剤の生体投与の検討から、その投与は連続移植による野生型造血幹細胞の自己複製能低下を抑制することが判明した。さらに造血幹細胞にp38MAPK活性化抑制作用のあるASK1を強発現させたところ、阻害剤の全身投与と同様の結果が得られた。以上の結果から、p38MAPK活性化抑制が微小環境ではなく造血幹細胞に直接作用し、幹細胞を静止状態に保ち自己複製能を維持すると結論付けた。
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Research Products
(1 results)