Research Abstract |
本研究は,音声言語の認知過程で,プロソディ情報がどのくらいセグメンテーションに利用され得るかを明らかにすることを目的としており,高品質な合成音声を用いた認知実験を計画し,検討を進めている。 心理学的観点から音声の実時間認知処理を考える際,要因を切り分けて考える必要がある。 第一に,認知が「いつ」「どこで」行われているかを切り分けた実験を行う必要があること, 第二に,実験タスクによる処理レベルの違い(心的辞書にアクセスするかどうか)を切り分けること, である。本研究は,これらの要因を分けた実験を試みている。 今年度は,音声データの加工手法の検討と,無意味語音声タスクを用いた実験を行った。 1.音声データの加工手法の検討 高品質音声分析変換合成システムSTRAIGHT(開発者:和歌山大学・河原英紀教授)を用いて,収録済みの音声を再合成し,実験音声の作成を行った。分析した音声は,モーラ数の総数が9になるように,3+6,4+5,5+4,6+3の範囲でアクセント型を組み合わせた,有意味語音声76音声と,これを模倣した無意味語音声76音声である。この有意味語音声と無意味語音声の,高さ,強さ,時間構造をそれぞれ分析した後,モーフィングという手法を用いて音声を合成し,有意味語音声の時間構造と高さの情報を持った,76の無意味語音声を作成した。 2.無意味語音声タスクを用いた,心的辞書アクセス前のセグメンテーションについての検討 今年度は,心的辞書にアクセスする前にタスクが行われる状況を想定した実験を計画した。実験は,1.で作成した無意味語音声の合成音を用いて行い,意味手がかりを持たないタスクにおいて,プロソディ情報だけでセグメンテーションができるかどうかを確認した。
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