2007 Fiscal Year Annual Research Report
臨界発火時系列を利用した大脳皮質-皮質間局所回路網の理論的解明
Project/Area Number |
17700318
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
寺前 順之介 The Institute of Physical and Chemical Research, 脳回路機能理論研究チーム, 研究員 (50384722)
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Keywords | 大脳皮質 / 確率過程 / べき乗則 / synfire chain / 位相応答 / 同期発火 / 不均一性 / ネットワーク |
Research Abstract |
認知・短期記憶・統合等、脳によって処理される高次機能は大脳皮質によって担われていると考えられる。回路構造の同定には極めて多数の神経細胞間の結合を調査する必要があり、現在の解剖学、生理学的手法では限界があるため、本研究は、実験結果と数理的な解析を統合する事で、大脳皮質局所回路構造の青写真を得ることを目的とした。我々は、大脳皮質スライス生理実験で観測された自発発火活動の伝播過程に着目し、そこで観測されるほぼ正確なべき乗法則から、同期的な細胞集団の発火を安定して伝播させる連鎖的な回路構造が多数、多様な規模で存在し、それらが互いに絡み合う事で皮質局所回路が構成されるという提案を行い、この回路構造がべき乗法則に従う発火伝播を可能にする事を理論的に示した。本年度は、さらに皮質局所回路を構成する神経細胞固有にも着目し、皮質の基本構造である6層構造の特徴づけも理論的に試みた。神経細胞は周期発火時の応答特性により2種類に分類される。しかしこの分類は緩やかな物であり、同一分類内でも応答特性は決して均一ではない事が先行研究で指摘されて来た。我々は不均一性が集団挙動に及ぼす影響を理論的に解明する事で、6層構造各層の特徴的な発火特性を推定し、局所回路構造の解明に生かす事を試みた。その結果、不均一性の程度によって周期発火する神経細胞集団の位相同期特性が相転移的に変化する事を見出した。II/III層の神経細胞は広い発火率領域に対して安定した同期状態を示すが、IV層の神経細胞では発火率に応じて位相同期の転移が実際に起き得ることを示す事にも成功した。
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Research Products
(4 results)