2005 Fiscal Year Annual Research Report
加齢にともなう筋萎縮はSRF(筋分化因子)の発現減少に起因するか?
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17700500
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
佐久間 邦弘 豊橋技術科学大学, 体育・保健センター, 助教授 (60291176)
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Keywords | 骨格筋 / Serum response factor (SRF) / 筋萎縮 / 加齢 |
Research Abstract |
筋発生過程だけではなく成熟した哺乳動物の筋肥大においてもRhoA-SRF(Serum response factor)経路は重要な役割をする。ラットの足底筋に対する代償性過負荷(Mechanical Overloading)は筋肥大をもたらすが、このとき分化期の衛星細胞(satellite cell)にRhoAおよびSRFが発現することを我々は報告してきた(Sakuma K et al.,Histochem Cell Biol 119:149-160,2003)。SRFは、MRTF-A(myocardin-related transcription factor A)やMRTF-Bと複合体を形成し、転写促進に働くことが最近わかってきた。加齢にともない骨格筋では筋細胞の変性・脱落、萎縮が生じるが、この原因についてはまだ不明な点が多い。本研究では、骨格筋におけるRhoA、SRF、MRTF-A & -BならびにRhoAの阻害物質であるRhoGDIの加齢にともなう変化について調べた。実験動物にはC57 Black/6Jマウス(3ヶ月と24ヶ月齢)を用い、大腿四頭筋(Quadriceps)と上腕三頭筋(Triceps Brachii)を分析に用いた。各マウスの両筋から、RNAを抽出し、RT-PCR法によりMRTF-A & -BのmRNA発現量を調べ、Western blot法を用いて、RhoA、RhoGDI、SRFの蛋白量を比較検討した。また7μmの凍結横断切片を作成し、蛍光免疫組織染色法によりSRFの局在様相を調べた。加齢マウスの両方の筋において、SRF蛋白量、MRTF-A & -B mRNA発現量が有意に減少した。若齢筋では、筋線維の細胞質、筋核と衛星細胞の約50%にSRFの発現が認められたものの、加齢筋においてDAPIで識別される筋核と衛星細胞のほとんどにSRFの発現はみられなかった。骨格筋におけるRhoA蛋白の発現量は加齢マウスで明らかに高値を示したが、RhoA阻害物質であるRhoGDIの発現量も加齢マウスで大きかった。筋細胞の骨格を形成するアクチン、ミオシン軽鎖、デスミンといった物質は、SRFおよびMRTFの核内移動で転写促進される可能性が高い。加齢にともなう骨格筋でのSRF-MRTFの顕著な減少が、筋細胞の萎縮を誘導する可能性が示唆された。
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