2005 Fiscal Year Annual Research Report
上部対流圏から下部成層圏における水蒸気分布の変動要因の解明と気候に及ぼす影響評価
Project/Area Number |
17710013
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
江口 菜穂 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, NIESポスドクフェロー (50378907)
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Keywords | 大気科学 / 水蒸気 / 成層圏対流圏間物質交換過程 / 衛星観測データ解析 / ゾンデ観測 / 気候変動 |
Research Abstract |
上部対流圏における水蒸気の気候への影響評価は、観測データの不足から依然大きな不確定性を含んでいる。本研究では、衛星観測データとゾンデを用いた現場観測データを組み合わせることで、科学的に有効な水蒸気データの取得とそれを用いた解析から上層の水蒸気の気候への影響をより定量的に評価することを目的としている。以下に本年度実施した研究項目を記述する。 1.衛星観測データの解析:近年アジアモンスーンによる上層の水蒸気場への影響が指摘されている。そこで、アジアモンスーン域における水蒸気変動と、そこでの成層圏対流圏間物質交換過程を明らかにするために、アメリカの高層大気観測衛星(UARS)に搭載されているマイクロ波放射計(MLS)より得られた水蒸気データの解析を行った。その結果、北半球夏季アジアモンスーン域に定在するチベット高気圧の北東部で温位面に沿った水蒸気の下部成層圏への移流と、アジアモンスーンの対流活発域上空において温位面を横切る水蒸気の鉛直移流が確認された。これらの結果を論文にまとめてJournal of Geophysical Research Atmosphereに投稿した。 2.現場観測のための準備:上層の水蒸気観測に適したゾンデ搭載用の温湿度計の観測原理の把握とゾンデ観測の準備を行った。また前述の衛星観測データの解析結果を基に、観測候補地の情報を収集した。 3.学会への参加と情報収集:上述したアジアモンスーン域上空での水蒸気変動に関する解析結果を議論するためと観測候補地の情報を集めるために、国内外で行われた学会等に積極的に参加した。10月にフランスで開催された上部対流圏・下部成層圏をテーマにしたスクールに参加したことで、上部対流圏から下部成層圏における力学・熱力学・放射・化学・微物理過程に関する最新の知見を得ることができた。また世界各国の若手研究者と意見交換を行い、交流を深めることができた。
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